こんにちは!都立自校作成校受験対策専門塾・誠学会の諏訪孝明です。
この記事では、2023年2月に行われた都立戸山高校の自校作成問題の国語・鑑賞文(古典を題材にした説明文)の問題を解説します。
自校作成校受験生のうち、
・国語で安定して高得点をとるための読み方・解き方を知りたい
・都立高校入試に独特の形式である鑑賞文に苦戦している
・過去問演習の後、自分の読み方・解き方や理解・解釈が合っているのかどうかを確認したい
といった方におススメです。
なお、今回の解説をより理解するために国語を解くときに気を付けてほしいことをこちらにまとめております。
今回の解説に先んじて読んでおいていただくと理解が深まります。
是非読んでみてください。
また、一度自力で本文を読み設問を解いてから読むことを強くお勧めします。
2023年度 都立戸山高校の国語のその他の大問は以下のリンクをご覧ください。
では、解説をはじめます。
目次
- 1 本文
- 1.1 其角
- 1.2 歌枕
- 1.3 西行
- 1.4 ~はできない
- 1.5 芭蕉
- 1.6 から
- 1.7 また
- 1.8 から
- 1.9 めずらしい⇔ふつう/かわりに
- 1.10 頭韻を「ウ」で揃える
- 1.11 ~が多い。しかし…
- 1.12 ~してしまう
- 1.13 ~に見えるが、…~であろうと思う
- 1.14 こそ
- 1.15 最も
- 1.16 から
- 1.17 AよりもB
- 1.18 ~と思われる
- 1.19 ~が必要である
- 1.20 ~であろう
- 1.21 比喩的表現
- 1.22 ことさらに重要
- 1.23 ~のである
- 1.24 一層強調される/一層強調され
- 1.25 ~であろう/~と思われる/~に思われる
- 1.26 反省されている
- 1.27 つまりは/~のである
- 1.28 ~らしい
- 1.29 ~だろう/~であろう
- 1.30 造化
- 2 設問
- 3 都立戸山高校に合格するなら自校作成専門対策塾 誠学会
本文
其角
この人自体は「有名人」ではないですが、松尾芭蕉の門人(≒弟子)です。
有名人の関係者なので、この人が文章のなかでキーパーソンになる可能性があると考えます。
(実際には、この文章では其角はあまり重要ではありません。)
歌枕
古くから和歌で詠まれることの多いスポットです。
過去の人が詠んだ歌を基にした歌があり、それを知識として知らないと歌の良さが分からないことがあります。
和歌を詠むのも楽しむのも知識・教養が必要になるということですね。
西行
平安時代末~鎌倉時代の歌人です。
都立大問5・鑑賞文の界隈では「有名人」です。
全国各地を旅してたくさんの歌を詠みました。
~はできない
筆者の主張があることを示す文末です。
「松尾芭蕉と西行とのゆかりが重要である」という主張です。
芭蕉
超がつくほどの有名人です。
この人も旅をして歌を詠んだので西行との類似性がありますね。
から
因果関係を示す表現です。
原因:西行の行動から芭蕉が思いつき(着想)を得て歌を詠んだ
結果:芭蕉と西行にはゆかりがあるといえる。
また
から
何かを追加する表現です。
ここでは、西行と芭蕉のゆかりを示す因果関係の追加です。
西行の歌が芭蕉の句の「潮の花」というフレーズに影響を与えている
ということです。
めずらしい⇔ふつう/かわりに
分かりやすい対義語のペアです。
こういうときに対比構造を意識するようにしてください。
「潮の花」 ⇔「シオバナ」
めずらしい ふつう
AのかわりにBというのも、AとBの対比構造を示します。
頭韻を「ウ」で揃える
五・七・五・七・七のそれぞれのフレーズの頭文字を「ウ」で揃えるということです。
和歌の技法については事前知識を持っておくと大問5・鑑賞文が詠みやすくなります。
~が多い。しかし…
一般論+逆接+主張
の形をとっています。
今回の主張は
「波の花」は波頭一般をいうものだ
というものです。
~してしまう
マイナスのニュアンスをもたせるときに用いられます。
そのとき、「AはBじゃない」という主張がなされます。
ここでは、
「潮の花」≠「波の花」(波頭一般)
という主張です。
~に見えるが、…~であろうと思う
譲歩+逆接+主張
の形です。
今回の主張は
「潮の花」=「満ちて来る潮の花」
です。
こそ
最も
どちらも強調表現です。
また、
から
という因果関係と
AよりもB
という対比構造を
示す表現があり、
~と思われる
という筆者の主張があることを示す文末があることから
このあたりに書いてあることが文章全体を理解するうえでとても重要であることが分かります。
ここでは、
芭蕉の句のなかの「潮の花」とは、「潮が満ちて来るタイミングでのみ見られる潮の花」である
という主張をしています。
~が必要である
筆者の主張があることを示す文末です。
が、今回は
多少のまわり道が必要である
ということしか言っていないのであまり重要ではありません。
~であろう
こちらも筆者の主張があることを示す文末です。
今回は
1つの微妙な意味=「潮の花」をうたがってしまうような気持ちを持ちたくない
といったような内容になっています。
「潮の花」は今回の文章のメインテーマですので、重要な箇所であると判断できます。
比喩的表現
比喩とは、あるものを他のあるものに例えて説明する表現方法です。
一種の「ウソ」ということになります。
今回でいえば、「潮の花」と言っていますがそこに花が咲いているわけではありません。
ことさらに重要
「重要」というだけでも重要ですが、それをさらに強調しているのでここが特に重要な箇所であることが分かります。
内容は、
「花」という言葉の、和歌における重要性(春を想起させる)
というものになっています。
~のである
筆者の主張があることを示す文末です。
ここでは、
「反省されている」という主張です。
「反省」というと、何か悪いことをしたように思えるかもしれませんがそうではありません。
「反省」は「もう一度しっかり考えてみる」といった意味です。
一層強調される/一層強調され
ここでは強調表現と、
~であろう/~と思われる/~に思われる
という筆者の主張があることを示す文末が多用されています。
ここも重要な箇所になるようです。
ここの内容は
「潮の花」を疑ってはならない
という既に紹介した内容を繰り返しています。
反省されている
傍線部4で使われていた言葉の反復です。
同じ言葉の繰り返しは見逃さず注目できるようにしましょう。
それが傍線部の言葉であればなおさらです。
つまりは/~のである
要点や筆者の主張があることがわかります。
ここでは、
(「潮の花」という比喩表現を通して)言語のもつ象徴機能とその所以を明確に意識している
という主張になります。
~らしい
「潮の花」が本当は花ではないのに花に見えるのは人為を超えたところにあるものの仕業(=神仏の威徳)である
ということを伝えています。
~だろう/~であろう
このあたりで「神仏の威徳」というフレーズが繰り返されているので、これをキーワード認定します。
造化
注によると、「人為を超えたもの」という意味です。
つまり、「神仏の威徳」です。
「神仏の威徳」が再度言い換えられているということは、キーワード認定して間違いないとわかります。
ここまで何度も言われていると、「設問で使いそうだな」と判断できるわけです。
設問
問1
西行とのゆかりは2つ示されています。
①西行の行動から芭蕉が何かを思いついた
②西行の歌が芭蕉の句の「潮の花」というフレーズに関わっている
この2つです。
これらを両方とも説明できている選択肢を選びましょう。
ア
どちらも書いてあります。
イ
「旅に出たいと考えた」⇒×
ウ
「西行が歌を詠んだ」⇒×
エ
其角が見出した⇒×
問2
頭韻を「ウ」で揃える
=五・七・五・七・七のそれぞれのフレーズの頭文字を「ウ」で揃える
ということの意味が分かっているかどうかです。
エ
エのみ、すべて「よ」で始まっていて頭韻が「ヨ」で揃っています。
問3
「潮の花」⇔「波の花」という対比における筆者の考えを尋ねる質問です。
筆者の結論は
「潮の花」とは、(一般的な波頭ではなく)「潮が満ちて来るタイミングでのみ見られる潮の花」である
というものです。
ア
「波の花は」(中略)よく表現している⇒×
イ
これが正解です。
ウ
「満潮の波の様子」⇒×(満潮になっていくタイミングでの波の様子です。)
「新春のめでたさ」⇒×(無関係)
エ
「波の花」とする方が一般的⇒×(筆者はこちらを支持しているわけではない)
問4
「そのような効果」という指示語の具体化を問う問題です。
ここでは、
・「花」⇒春を含蓄する
・比喩的表現(潮の波頭を花に喩える)
の2つの表現の効果であると考えます。
ア
華やかな新春の雰囲気⇒×(「春」ではありますが「新春」つまりお正月ではないですね。)
イ
信じていたい気持ちを妨げる⇒×(疑うな、なので信じる気持ちを促しています)
ウ
〇
エ
日本人の感性を再確認⇒×(無関係)
問5
傍線部5付近のキーワードは「神仏の威徳」でしたね。
これをきちんと踏まえられている選択肢を選びましょう。
ア
「疑う余地のないこと」⇒×(疑う余地のないことであればわざわざ「疑うな」と言う必要はありません)
イ
「神仏の威徳」をわかりやすく示す⇒〇
ウ
「神仏のみが成し得る」⇒×(「のみ」とは書いてありません)
エ
「神仏の威徳」の存在は表現されていない⇒×
今回の解説は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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