こんにちは!都立自校作成校受験対策専門塾・誠学会の諏訪孝明です。
この記事では、2023年2月に行われた都立戸山高校の自校作成問題の国語・説明文(評論文)の問題を解説します。
自校作成校受験生のうち、
・国語で安定して高得点をとるための読み方・解き方を知りたい
・難解なテーマの文章を読解するのが苦手・過去問演習の後、自分の読み方
・解き方や理解・解釈が合っているのかどうかを確認したい
といった方におススメです。
なお、今回の解説をより理解するために国語を解くときに気を付けてほしいことをこちらにまとめております。
今回の解説に先んじて読んでおいていただくと理解が深まります。
是非読んでみてください。
また、一度自力で本文を読み設問を解いてから読むことを強くお勧めします。
2023年度 都立戸山高校の国語のその他の大問は以下のリンクをご覧ください。
では、解説をはじめます。
目次
本文
「大正時代に書かれたもの」とわざわざ紹介されているので、時代背景が分からないと誤読する可能性がある文章であると推測できます。
第1段落
とは
「とは」は、用語の意味や用法を定義するときに使われる表現です。
ここでは、「骨董趣味」という語の意味が紹介されているのでそれがキーワードであると判断できます。
骨董趣味=古美術品の鑑賞
と定義されています。
不純⇔純粋
分かりやすい対義語のペアとなっています。
骨董趣味⇔芸術的の趣味
という対比構造が分かります。
「区別」という語からも対比構造があることが分かります。
あるいは
物事を列挙するときに使われる表現です。
ここでは、骨董趣味について
・「時」の手が加わる
・時代の匂が生じる
・歴史的連想も加わる
・昔の所蔵者に関する連想
・古いので現在稀有
・愛着の念
といったものが価値の源泉であることが分かります。
「骨董趣味」というキーワードを説明しているので、ある程度注意して読まなければなりません。
不純な趣味
先ほどあった「不純」⇔「純粋」の対比に関わる語ですので、キーワードの1つです。
ここからは、さらに注意して読みましょう。
不純な趣味=人に誇る(=自慢する)
とされています。
第2段落
科学
高校受験現代文において「科学」という言葉が出てきたらキーワードになることがほとんどだと考えてください。
高校は義務教育ではありません。
高等教育です。
生活にも直接深く関わる義務教育の内容に加えて、さらに「科学」を勉強したい人が集まる場所です。
なので、「科学」は重要なワードとなります。
「新しく発見された」⇔「旧くから知られている」
こちらもわかりやすい対義語です。
対比構造なので、重要です。
べきものではない
筆者の主張があることを示す文末です。
ここでは、「古いか新しいかは重要ではない」という主張がされています。
~であるべきように見える。しかし…
「一般論+逆接+主張」の形をとっています。
ここでは、
「科学の世界でも骨董趣味は常に流行している」という主張です。
第3段落
人間未生以前から
「古くから」ということです。
骨董趣味は「古いもの」に対して感じる愛着ですのでこのワードに注目できると良いですね。
このくらい…なものはない
最上級表現は重要です。
また、ここでは「古さ」の最上級ですのでそこからも重要であると判断できます。
類する点がある
科学者の欲望≒骨董趣味
と主張しています。
対比(⇔)が重要であるのと同様、「=」や「≒」といった関係性も重要です。
AではなくB
・A⇔Bの対比構造があること
・AよりもBのほうが文脈上重要であること
が分かります。
芸術家の創作的欲望
こちらは骨董趣味と対比される「純粋な芸術的の趣味」のことを指すと判断できます。
今回のメインテーマとは離れています。
科学的骨董趣味
ここまでの対比構造が分からなくても、この語をみれば筆者が「科学≒骨董趣味」という図式をつくっていることがダイレクトに理解できます。
第4段落
種々の階級がある/多種多様である
言い換え表現は重要であることが多いです。
しかし、ここでは
区別は別問題/本文の範囲外
と述べているので重要ではないと判断できます。
二つ/二種/対照
ここから対比構造に注目して読むべきパートが続くと分かります。
第5段落
歴史×2、古い
骨董趣味に関する説明で用いられていたワードです。
骨董家、骨董趣味×2
今回のメインキーワードです。
科学における骨董趣味の1つ目は、「科学の歴史」を愛することのようです。
第6段落
次に
1つ目の紹介が終わり、2つ目の紹介に移ることの目印です。
骨董趣味/骨董的傾向
今回の文章のキーワードです。
これが骨董的傾向を帯びる
「これ」という指示後の具体化が重要です。
今回は、「先人の研究を引用し批評すること」です。
これが科学における骨董趣味の2つ目であるようです。
第7段落
正反対の極端
対比構造を示す語です。
歴史
骨董趣味の人が大事にするものです。
全く無意味
骨董趣味とは別の価値観を持った人たちのことを紹介する流れになっていることが分かります。
最新の知識
「古さ」とは対極にあります。
ここまで読むと、「正反対の極端」が何を指しているのかが分かります。
「古いものは何物でも無価値」⇔「新しきものは無差別に尊重する」
分かりやすい対比構造です。
骨董趣味=古いものが好き
に対して、
新しいものが好き
という価値観を紹介しているようです。
第8段落
日進月歩の新知識
骨董趣味とは対極にあります。
歴史的の詮索までに手の届かぬ
こちらも骨董趣味ではありえない話です。
第9段落
科学上の骨董趣味
この文章の最重要キーワードです。
軽視すべきものではない
重要である、ということです。
例えば
具体例を提示することを示す語です。
科学において骨董趣味が重要であることを示す具体例が続くようです。
このような類例
「このような」とあることから、ここで具体例が終わりその共通点を紹介するパートに移ることが分かります。
「新しい芸術」⇔「古い芸術」
分かりやすい対比構造です。
ここでは、次の
「新しい科学」⇔「昔の研究」
につながっています。
新しき衝動
古き考の余燼から産まれ出る
これらも、「新しい」と「古い」の関係性を示しています。
第10段落
現今大戦
大正時代の文章ですから、これが第一次世界大戦を指しているとわかります。
これがあるので、わざわざ「大正時代に書かれた文章である」と示されていたのでしょう。
科学は応用の方面に
科学のジャンルにおける「応用」とは、私たちの生活に役立つモノや技術を開発するという意味です。
成果が目に見えて分かりやすいため世間の人々から称賛されやすく、金儲けにもつながりやすいため企業からの協賛も得やすいです。
したがって、科学者も応用研究に力を入れてしまいがちです。
しかしながら、基礎研究も重要です。
基礎研究とは、「知的好奇心に基づいて何かを明らかにしようとする」営みのことです。
何の役に立つかは分かりません。
その一方で、基礎研究の成果の積み重ねが応用研究に文字通り「応用」されて新しいモノや技術が生み出されていきます。
このことから、
応用研究だけではなく、基礎研究の重要性をしっかりと理解し、それを国も企業もサポートしていかなければならない
と主張する文章が出題されることは非常に多いです。(今回もそういった流れになっています。)
ですので、ここで書いたことはしっかりと覚えておきましょう。
説明文を読むのに必要な「常識」です。
骨董趣味
今回の文章のキーワードです。
功利
ここでは経済的な利益のことであり、上述の通り応用研究と相性が良いです。
純知識欲に基づく科学的研究
基礎研究のことです。
あってはならぬ/思う
筆者の主張があることを示す文末です。
ここでは、
「応用研究ばかり重視せず、基礎研究の重要性もしっかりと理解せよ」
という主張がなされています。
第11段落
温故知新
昔のことから新しい知識や見解を得ることです。
まさにこの文章が示している内容です。
~のである
筆者の主張があることを示す文末です。
ここでは、
「科学においても昔のことから新しい知識や見解が得られることがあるはずだ」
というものです。
設問
問1
第1段落の内容から、
・骨董趣味:古美術品の鑑賞
・不純な趣味:人に自慢すること
となります。
これを満たす選択肢を選びましょう。
ア
化石:美術品ではありません
イ
多くの人の公開する:自慢していません
ウ
即座に手に入れる:自慢していません
エ
平安時代の能筆家の書:古美術品です
ひけらかす:自慢しています
これが正解です。
問2
「常に新鮮なるべきもの」とは、骨董趣味とは正反対の嗜好です。
というわけで、「これ(骨董趣味)と正反対の極端にある」とある第7段落の内容をまとめると正解できそうだと判断できます。
傍線部2は第2段落にあります。
この問題の答えが第7段落の内容となるのは、
「傍線部の周辺から答えになりそうな箇所を探して答える」
というやり方では絶対に正解できませんね。
皆さんのなかでそういうやり方しかできない人がいたら、文章の全体像を論理的に読解する読み方を習得できるようにしてください。
今回は、
「古いものは何でも無価値」「新しいものは何でも尊重する」
という表現を入れておけば得点できると考えて良いです。
問3
ここでの「科学者の要求」とは、骨董趣味とは対比される「芸術的の趣味」に類するものです。
したがって、骨董趣味が重視する「古いもの」「歴史」「先人の研究」といったものは重視しないはずです。
ア
原初から存在する⇒×
イ
骨董趣味が重視しそうなものが書いてありません⇒〇
ウ
定説を念入りに検証⇒×
エ
「世の中を驚かせたい」
これは、この文章のどこにも書いてありません。
書いていないので、×です。
問4
「科学上の骨董趣味」が軽視されてしまう理由です。
これは「応用研究の重視」つまり「すぐに役に立つことの重視」です。
ア
個人的な満足感を満たそうとしている⇒×
イ
生活の向上という研究の目的⇒〇
ウ
激しい時代の流れから目を背けようとしている⇒×
エ
先行研究の価値を証明することを目的⇒△
内容として間違ってはいませんが、ここでのメイントピックではありません。
問5
「このような類例」とは、
昔の研究の成果を参考にして新しい科学的な発見がなされる例を指しています。
ア
思いつき⇒×
イ
精神的支柱⇒×
ウ
途方もない夢⇒×
エ
飽くなき探求⇒〇
問6
応用研究だけでなく基礎研究のこともしっかり重視しよう、という主張です。
筆者は傍線部直後で「直接の応用には限界があり、予想外の応用が大事だ」と述べています。
ア
他者の様々な意見を受容する態度⇒×
イ
平和の実現を求めて⇒×
ウ
思いがけない発想⇒〇
エ
唯一の手段⇒×
問7
いわゆる200字作文です。
「温故知新」が役に立つことについて述べるよう求められています。
これには、昔はできていたが、今は上手くできていない事柄がぴったりです。
したがって、私が推奨する内容は
・自然との共生
・大量生産・大量消費とは無縁の暮らし
すなわち
・持続可能性の追求
・環境への配慮
などとなります。
200字作文は学校が解答例を公開してくれていますので、それを参考にしながら書くと良いです。
得点力アップのためには、書いた200字作文を都度添削してくれる塾やサービスを利用しましょう。
今回の解説は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また別の解説記事でお会いしましょう!
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