こんにちは!都立自校作成校受験対策専門塾・誠学会の諏訪孝明です。
この記事では、2023年2月に行われた都立新宿高校の自校作成問題の国語・鑑賞文(古典を題材にした説明文)の問題を解説します。
自校作成校受験生のうち、
・国語で安定して高得点をとるための読み方・解き方を知りたい
・都立高校入試に独特の形式である鑑賞文に苦戦している
・過去問演習の後、自分の読み方・解き方や理解・解釈が合っているのかどうかを確認したい
といった方におススメです。
なお、今回の解説をより理解するために国語を解くときに気を付けてほしいことをこちらにまとめております。
今回の解説に先んじて読んでおいていただくと理解が深まります。
是非読んでみてください。
また、一度自力で本文を読み設問を解いてから読むことを強くお勧めします。
2023年度 都立新宿高校の国語のその他の大問はこちらをご覧ください。
では、解説をはじめます。
目次
本文
鑑賞文では、
・筆者の主張
・筆者が引用している作品の作者の主張
・論理構造を示す語句
の3つに注意します。
第1段落
お気に入り
『枕草子』の作者である清少納言の主観。
清少納言は厳寒と酷暑がお気に入り。
『源氏物語』に影響を与えた
国風文化において、清少納言『枕草子』は紫式部『源氏物語』と対比される存在、2大巨頭です。
これは社会の授業で習っていることなので「知っていて当然」とされます。
この知識を前提とすると、清少納言『枕草子』が紫式部『源氏物語』に影響を与えたという事実は「おお~」と思わなければいけない事柄となります。
また、鑑賞文は「ある古典作品が
段落の要旨:『枕草子』の冬についての諸段は『源氏物語』に影響を与えたとされている。
第2段落
批判した
光源氏が(光源氏の名を借りて紫式部が)批判をしています。
これは紫式部が何かを主張しているということになります。
注目せねばなりません。
「誰かさんが雪は月とは合わない」といったことを批判しています。
「誰かさん」が誰なのかは明言されていないのでわかりません。(文脈から「清少納言だろう」とわかる人はそれでOKです。)
つまり
「つまり」の直後には要点(筆者の主張)がきます。
ここでは、
紫式部が、清少納言が「雪と月は合わない」と言ったことを批判したのだ
ということです。
かもしれない
「かもしれない」は筆者の主張があることを示す語尾です。
ここでは、
紫式部は『枕草子』を読み、清少納言の美意識を越えようとしていた(と私は思う)
ということです。
段落の要旨:紫式部は源氏物語のなかで清少納言の美意識を批判しており、それを越えようとしていたと考えられる。
第3段落
どう理解すればよいのだろうか
これは疑問または反語です。
疑問⇒直後に答えがある。つまり、「こういう風に理解すればよいですよ」という答えを筆者が提示している。
反語⇒この文章中に答えがない。つまり、「理解不能になってしまう」という主張であると考える。
今回は、直後に答えがありません。
したがって、この表現は反語であり筆者が「理解不能である」≒「矛盾が生じていておかしなことになる」と言っている。
月夜の雪景色をことのほか美しいものとして記している
これは、上述の「清少納言は雪を月とは合わないと言った」という話と反対の内容になっています。
つまり、清少納言は『枕草子』のある場面では「雪を月とは合わない」といい、他の場面では「雪と月は合う」と言っていたことになります。
段落の要旨:『枕草子』には、「雪と月の組み合わせから美を感じていた」と読める記述がある。(もしそうだとすると先ほどの紫式部の批判が的外れなものということになってしまう)
( )内のことまではこの時点では読み取れなくてもOKです。
この後を読んでいけば分かるようになっています。
第4段落
この段落は、『枕草子』の引用した箇所の解説です。
第3段落までを読めていれば、この段落は読まなくてもよいです。
なぜならば、筆者による引用の意図が「清少納言が雪と月の組み合わせから美を感じていたことを示したい」とはっきりとわかっているからです。それ以上の情報を受け取る必要はありません。
第5段落
見落としていたのだろうか
こちらも、疑問or反語の可能性があります。
今回は、第6段落の冒頭に「~な可能性が考えられないか」と筆者の考える答えが書いてあるので疑問です。
あるいは
もう1つ別のものを追加するときの表現です。
今回は、
可能性①紫式部が、清少納言の「雪と月は合う」という主張を見落としており、清少納言の美意識を勘違いしていた
可能性②紫式部は、清少納言の「雪と月は合う」という主張を無視して「清少納言は雪と月は合わないと言っている」と批判した
の2つの可能性を提示し、そして「不当で不自然」と評することでどちらも却下しています。
段落の要旨:紫式部がこの章段を見落としていたとも無視したとも考えづらい。
第6段落
考えられないか
「私はこう考える」ということなので、筆者の主張がきます。
~されがち
一般論を表します。
通常、一般論は筆者の主張とは逆の内容になります。
もし筆者の主張が一般論と同じなら、わざわざ文章にして発表する必要はありませんので。
ですので、一般論の内容を理解すると「この逆が筆者の主張になるのだな」とわかります。
ここでは、
『枕草子』が先に書かれ、『源氏物語』が後で書かれた
というのが一般論です。
これを覆してくるのだな、とわかります。
確実なのは…
筆者が「これは確実だ!」と言ってきている内容は我々へのメッセージです。
『枕草子』『源氏物語』には並んで書かれた時期があった
という主張になっています。
これは先ほどの一般論とは異なる内容になっているので「一般論⇔主張」の条件も満たしています。
AだけでなくB
Bが重要です。
~という可能性も否定できない
「~だ」という主張です。
以上2つより、
『源氏物語』の影響を受けて『枕草子』の283段が書かれた
という内容がこの文章においてとても重要な主張であることが分かります。
段落の要旨:『枕草子』と『源氏物語』には並んで書かれた時期があったので、『枕草子』が『源氏物語』の影響を受けている可能性もある。
第7段落
推測
筆者が「~ではないか」と主張している。
推測の内容は、
清少納言と紫式部は、互いの作品を読み合い、美意識のやりとりをしていたのではないか
である。
段落の要旨:清少納言と紫式部は、互いの作品を読み合い、美意識のやりとりをしていたのではないかと私(筆者)は考える。
第8段落
あながち推測ばかりではない
これは、
「単なる私の推測というわけではなく、正解である可能性もあるぞ」
ということです。
対比
対比は論理構造を形成する重要な要素です。
ここでは、『枕草子』中の
「自然」(雪と月光が白一色)⇔「人」(彩り豊かな装束を着ている)
の対比が示されている。
同じ色の対比
源氏物語にも、『枕草子』と同じ対比があるということを示します。
2つのものの共通点を示す表現はとても重要です。
見逃さないようにしましょう。
段落の要旨:(2人が美意識のやりとりをしていた証拠として、)どちらにも同じ色の対比がある。
第9段落
~と言ってよい
これは筆者の主張があることを示す文末です。
ここでの主張は、
『源氏物語』と『枕草子』には共有しているものがある
ということになります。
何を共有しているのかは空欄Ⅱで隠されています。
が、2人が共有しているものは段落8の要旨から明らかですね。
美意識です。
これがそのまま段落の要旨です。
段落の要旨:『源氏物語』と『枕草子』は美意識を共有している
第10段落
~ではないだろうか
筆者の主張があることを示す語尾である。
ここでは、
紫式部と清少納言は切磋琢磨し合う関係であった
という主張がなされている。
こそ/~ように思う/どうだろうか
それぞれ、
・強調
・筆者の主張であることを示す
・読者への問いかけ
であるため重要な箇所であることを示します。
ここでは、上述の主張(2人が切磋琢磨し合う関係であったこと)の重要性を強調しています。
段落の要旨:紫式部と清少納言は切磋琢磨し合う関係であったと考えられる。
以上が、今回の本文の解説です。
設問
問1
「見落としていた」と考えた理由
⇒『枕草子』には「雪と月が合っている」としている箇所があるのに、紫式部が『源氏物語』のなかで清少納言を「雪と月は合わない」として批判したのは見落としていたからだと考えることができるから。
こうなります。
これを踏まえて正解を選びます。
ア
「あえて触れず」⇒「見落としていた」と矛盾する⇒×
イ×
「気づかないまま」「批判している」⇒〇
ウ
「承知していながらあえて無視を決め込んだ」⇒「見落としていた」と矛盾する⇒×
エ
「~があるにもかかわらず~だけに触れて」⇒「見落としていた」と矛盾する⇒×
問2
①
本文中の「ばかり」は「だけ」と言い換えが可能です。
同じく、「だけ」と言い換えが可能な選択肢を選びましょう。
ア
できあがっただけ⇒×
イ
五年だけ⇒×(「五年ばかり」は約五年という意味なので、「五年だけ」とすると意味が変わってしまう)
ウ
結果だけ⇒〇
エ
とび上がらんだけ⇒×
②
推:推理、推量
測:測る
⇒どちらも予測する、考えるといった意味である
⇒似たような意味をもつ2文字の組み合わせを選ぶ
ア
批:批評
判:判断
⇒何かの価値を決めるといった意味
⇒これが正解
イ
大:大きな
胆:胆
⇒上の字が下の字を説明していると考えられる
ウ
早:早い
計:計略
⇒上の字が下の字を説明していると考えられる
エ
公:公に
表:表明する
⇒上の字が下の字を説明していると考えられる
問3
この文章の主旨である
・2人は互いに美意識のやりとりをしていた
・2人は同時期に作品を創作して切磋琢磨し合う関係であった
を理解していれば解ける問題です。
清少納言の、「雪と月は合わない」⇒紫式部に批判された⇒雪と月の組み合わせから美を感じるようになった
という変化を踏まえましょう。
ア
「師走の月夜」は趣深いものだと思っていた⇒×
イ
「調和しないと思っていた」「『源氏物語』を読んだ」「実は美しい」⇒上記の内容と合致している⇒〇
ウ
「自然と人事の対比の妙」⇒ここでは無関係⇒×
エ
「厳寒を強調した冬の美しさ」⇒月が関わっていないので×
問4
先に述べた批判のくだり
「先に述べた」とありますので、傍線部3より前を探すことになります。
また、紫式部による批判ですので、第3段落直後の『枕草子』の引用箇所にはありません。
そこで、それ以外の箇所を探します。
すると、第2段落に
「浅はかさ」「うすっぺらい」といった批判の言葉が見つかります。
これを目印に、源氏物語の原文箇所を探して答えます。
「すさまじき例に言ひおきけむ人の心浅さよ」
問5
空欄Ⅰ
第8段落・第9段落で対比されているのは
「自然と人」
ですので、これが答えです。
空欄Ⅱ
清少納言と紫式部が共有しているのは、2人がやりとりをしていた(第7段落)美意識です。
問6
問3に続いて、この文章の主旨である
・2人は互いに美意識のやりとりをしていた
・2人は同時期に作品を創作して切磋琢磨し合う関係であった
を理解していれば解ける問題です。
ア
相手より優れているという自負心⇒×
イ
共通する自然観⇒×
ウ
「影響を与えて高め合って」「相互交流」=切磋琢磨し合う関係⇒〇
エ
「批判を素直に受け入れ」⇒×というわけでもない気がしますが、ウには及びませんね。
今回の解説は以上です。
最後までご覧になっていただきありがとうございました。
皆さんの受験対策の一助となれば幸いです。
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