2023年度(令和5年度)都立新宿高校自校作成問題・国語大問2解説

2023年度(令和5年度)都立新宿高校自校作成問題・国語大問2解説

こんにちは!都立自校作成校受験対策専門塾・誠学会の諏訪孝明です。

この記事では、2023年2月に行われた都立新宿高校の自校作成問題の国語・物語文(小説)の問題を解説します。

自校作成校受験生のうち、
・国語で安定して高得点をとるための読み方・解き方を知りたい
・物語文が苦手
・過去問演習の後、自分の読み方・解き方や理解・解釈が合っているのかどうかを確認したい

といった方におススメです。

なお、今回の解説をより理解するために国語を解くときに気を付けてほしいことをこちらにまとめております。
今回の解説に先んじて読んでおいていただくと理解が深まります。
是非読んでみてください。

また、一度自力で本文を読み設問を解いてから読むことを強くお勧めします。

2023年度 都立新宿高校の国語のその他の大問はこちらをご覧ください。

では、解説をはじめます。

目次

本文

前文

まずは前文から。
前文には、重要な情報が集約されています。
本文ではないからといって、読み飛ばすことは決して無いようにお願いします。

前文からは、
・主人公が誰なのか
・主人公はどんな状況にいるのか
・他の主要人物はどんな人か

といった情報を得ることができます。

「大手プロダクションでレッスンを受ける」⇔「人気デュオ」

「対比」という論理構造を強く意識することで、
・ミチル・真由(まだレッスン受講中の見習いアイドル)⇔ピンキーガールズ(リハーサルに間に合わないくらい多忙な売れっ子アイドル)
の対比に気付くことができます。
①ミチルと真由はまだまだ未熟な存在である
②彼女たちにとって、ピンキーガールズというのは雲の上の存在である
といったことを情報として受け取ることができます。

マネージャーの桐絵

まだまだ未熟なミチルと真由ですが、既にマネージャーが付いているようです。
マネージャーは芸能人のスケジュール管理を行ったり、どの仕事を引き受けるかを管理する存在ですのでミチルと真由にとっては重要な存在(指導者的な役割、精神的支柱)だとわかります。

ピンキーガールズの代わりに

先ほど確認した通り、この時点でのミチル・真由とピンキーガールズには大きな差があります。
しかしながら、ミチルと真由がピンキーガールズの代わりを務めることになったということです。
「いくらリハーサルとはいえ、プレッシャーが大きいのでは…?」と考えられると良いですね。

本文

桐絵は震えた

マネージャーである桐絵の心情を示す動作です。
なぜ震えているのか
⇒まだまだ未熟なミチル・真由が(リハーサルに間に合わないほど売れっ子なアイドルである)ピンキーガールズの代わりを務めることになってしまったから

懇願する口調

これも桐絵の行動です。
なぜこんな口調になったのか
⇒まだまだ未熟なミチル・真由がピンキーガールズの代わりを務めることを阻止したかったから

桐絵の心情が一貫していることが分かりますね。

ぴしゃりと遮られた

これは大物演歌歌手・城田さんの行動です。
桐絵の懇願を却下しています。

城田さんはこの文章では「モブキャラ」だとこの段階で判断できる(主役級は桐絵・ミチル・真由とわかる)のでこの行動の理由については深追いする必要はありません。

ごくりと唾を飲みこむ/緊迫

これはミチル・真由の心情を示しています。
ピンキーガールズの代わりを務めるという大役に対する緊張感が伝わってきます。

自分の気持ちを鎮めようと必死

これも桐絵の心情です。
具体化しましょう。
「自分の気持ち」⇒これまで見てきた通り、ミチル・真由が「あの」ピンキーガールズの代わりを務めることに対する「震え」です。

なぜそれを鎮めようと必死なのか。
⇒ここはヒントの隠し方が巧妙。
 ヒント:真由が(桐絵に)すがるような目を向けてくる/ミチルが(中略)桐絵を見た
⇒桐絵はこの2人から頼りにされている
⇒桐絵はそれに応える必要がある
⇒2人を不安にさせないために、まず自分の「震え」をかき消そうとしている
と判断できます。

すがるような目

真由の描写です。
ピンキーガールズの代わりを務めることに対して怯えているのが分かります。

犬猿の仲

真由とミチルが普段は仲が悪いことが分かります。

2人の普段の関係性は、この後の描写を理解するのに必要な情報です。
ですので、ここでわざわざ言及されています。
読み落とさないようにしましょう。

めずらしく素直だ

真由のことです。
真由が、普段は素直ではないことが分かります。

低い声で(中略)言い切る

ミチルの行動です。
「やるしか、なか」と言い切っています。
ピンキーガールズの代わりを務めることに覚悟を決めました。
ミチルは真由より2歳年上です。
よって、精神年齢も上なのでしょう。
真由より先にミチルが覚悟を決めることとなりました。

優しい/子どもをあやすように

「十代半ばの少女たち」⇔「子どもをあやすように」
ここは対比があるので注意です。
十代半ばの彼女たちをなぜ子ども扱いしたのか。
それは、彼女たちがまだレッスンを受けている「見習い」だからです。
プロデューサーの彼女たちに対する、歯牙にもかけない態度(≒相手にしていない)が読み取れます。

桐絵の身体は反応した

具体化します。
どう反応したのか⇒ミチル・真由の背中を押しました。

なぜ?
⇒絶対的な権力者であるプロデューサーが「急げ」と言ったからです。その意向に従いました。

背中を押す

既出ですが、設問になっているので再度深く考えることにします。

懇願してまで代役を阻止しようとしていた桐絵がなぜ一転して背中を押した(代役としてステージに立つことを促した)のか
⇒絶対的な権力者であるプロデューサーが「急げ」と言ったので急ぐしかない(覚悟を決めて送り出すしかない)と思ったから

大丈夫/最高の機会/せっかくだもの/うんと楽しんでおいで

桐絵の発言です。
覚悟を決めて送り出すしかないと思ったので、前向きな言葉をかけています。

目と目を見交わす

真由とミチルの行動です。
犬猿の仲の2人が、緊急事態ということで協力する気になったとのことです。

固唾を呑んで見つめた/今にも心臓が止まりそう/祈る思い

桐絵の行動です。
ミチル・真由には「大丈夫」と言って送り出したものの、この後どうなってしまうのかドキドキしている様子が伝わります。

かすかに笑った

オケの指揮者である高尾の行動です。
「今にも心臓が止まりそうな」桐絵とは対照的な描写です。
主役級である桐絵と対比される描写があるということは、高尾もこの後何か重要な役割を果たすのでしょうか。

まぎれもなくスター

ピンキーガールズが一流のアイドルであることを、文面をかなり割いて描写しています。
「真由・ミチル」(レッスン生)⇔「ピンキーガールズ」(売れっ子アイドル)の対比を読者に確実に伝えるためだと思われます。
また、最後まで読まないとわからないことですが、ここでピンキーガールズの凄さを強調することで、この後その代役を完璧にこなす真由とミチルの凄さを伝えるという意味もあります。

このように、文章は一度通読し、二度目を読まないとわからないことがあります。
傍線部の前後のみをつまみ食いして設問を解こうとする受験生が結構いますが、国語で平均点以上をとりたいならやめたほうがいいです。
一度最後まで読んでから解きましょう。

ずっとにこにこしていた高尾⇔おごそかに言った

高尾がおごそかな顔をした理由
⇒真由とミチルの立ち位置を入れ替えたほうがいいというアドバイスに真剣みをもたせるため

立ち位置を入れ替えるアドバイスをした
ただのリハーサルなら、歌や踊りのクオリティはどうでもいいはずなので、わざわざ立ち位置を入れ替える必要はない
⇒良いパフォーマンスができるための提案をしてくれた
⇒高尾は2人の(そして桐絵の)味方である
⇒それを示す合図として、筆者は高尾に(城田とは対照的に)友好的な態度(ずっとにこにこ)をとらせている

顔を見合わせる/きょとんとした顔

真由とミチルの、高尾の指示に対するリアクションです。
頭の中が「?」となっていることが分かります。

うまく歌おうなんて思わなくていい

先ほどのプロデューサーもそうでしたが、高尾も真由とミチルには期待していないようです。
そう描写することで、この後の真由とミチルの素晴らしいパフォーマンスにギャップをもたらしています。

緊張の面持ち/少しはにかみながら

真由とミチルです。
相変わらず緊張はしていますが、覚悟は決めているようです。

目を瞠った/舌を巻いた

桐絵の行動です。
なぜ?
⇒真由とミチルのパフォーマンスが良かったから

どよめきと歓声/拍手

そう思ったのは桐絵だけではないことを伝えています。

何度も目と目を見交わす/笑み/名残惜しそうに

真由とミチルから緊張が消え、ノリノリでパフォーマンスをしていることが伝わります。

ニヤリと

高尾の行動です。
まるで「こうなることは分かっていた」と言わんばかりです。
高尾は、2人がこの立ち位置でパフォーマンスをすれば桐絵や周囲のスタッフの反応が変わるくらいのインパクトを残せると知っていたようです。
ここで、高尾がわざわざ「ふだんから馴染みの」と紹介されていたことの理由が分かります。
ふだんから真由とミチルのパフォーマンスを見知っている高尾は、2人の実力を知っていたということですね。

はっきりと視線を交わした/笑み崩れながら

真由とミチルの様子を描写することで、2人がノリノリで素晴らしいパフォーマンスをしていることが分かります。

信じがたい/息を呑んで

犬猿の仲であるはずの真由とミチルがはっきりと視線を交わしながら笑顔で歌って踊ることに対する驚きです。

悔しくてたまらなかった

桐絵の心情です。
峰岸にこの光景を見せられなかったのが悔しいとのことです。
そのくらい素晴らしいパフォーマンスだったということですね。

今日一番の拍手/ねぎらいの声/きみたちも(最後まで)見たかったろう?/素晴らしいパフォーマンスだった

これも2人のパフォーマンスが素晴らしかったことを示しています。

強く頷いて

真由とミチルの行動です。
2人の、今回のパフォーマンスに対する手応えの大きさを示しています。

両腕を大きく広げて/素晴らしかった/最高に光り輝いていた/涙が出ちゃった

桐絵の感想を示しています。

憎まれ口を叩く

先ほど「普段は素直ではない」とされた真由が憎まれ口を叩きます。
ピンキーガールズの代役を終え、「普段」に戻ったということです。

晴れがましさ/楽しかった

真由の、今回のパフォーマンスへの手ごたえを示しています。

もう、最高!

ミチルの手ごたえを示しています。

「満面の笑み」⇔「ぷいっと顔を背ける」

「普段」に戻った=犬猿の仲に戻った真由とミチルがいつもの関係に戻りました。
パフォーマンスの最中は「何度も目と目を見交わしていた」2人でしたが、ふだんはこんな感じのようです。

つっかかったり煽ったり無視したり仏頂面でいる

普段の2人の関係性です。

設問

ここからは設問について解説します。
本文について詳しく見てきましたので、ここから先を読む前にもう一度改めて自力でで解いてみてください。

問1

桐絵が自分の気持ちを鎮めようと必死です。
具体化しましょう。
「自分の気持ち」⇒これまで見てきた通り、ミチル・真由が「あの」ピンキーガールズの代わりを務めることに対する「震え」です。

なぜそれを鎮めようと必死なのか。
⇒ここはヒントの隠し方が巧妙。
 ヒント:真由が(桐絵に)すがるような目を向けてくる/ミチルが(中略)桐絵を見た
⇒桐絵はこの2人から頼りにされている
⇒桐絵はそれに応える必要がある
⇒2人を不安にさせないために、まず自分の「震え」をかき消そうとしている
と判断できます。

ア:大きなチャンス⇒これは前向きなとらえ方ですね。少なくともこの時点では前向きになれていません。
イ:恥をかく覚悟⇒本文中にありません。
ウ:怒りを抑えよう⇒怒りの心情ではないですね。
エ:動揺している⇒「震え」/自分が冷静である必要がある⇒2人から頼りにされている描写がある⇒これが正解。

問2

背中を押したときの桐絵の気持ち

懇願してまで代役を阻止しようとしていた桐絵がなぜ一転して背中を押した(代役としてステージに立つことを促した)のか
⇒絶対的な権力者であるプロデューサーが「急げ」と言ったので急ぐしかない(覚悟を決めて送り出すしかない)と思ったから

これについて言及している選択肢を探します。

ア:「迷っている場合ではない」⇒急ぐしかない⇒なぜならば、プロデューサーが急げと言っているから⇒正解
イ:期待する気持ち⇒×
ウ:自信を深めている⇒×
エ:なんとか見返してやりたい⇒×

イ~エはすべてプラス(前向き)な内容なので、そうではなく「プロデューサーに急かされたから仕方なく送り出している」ことを意識できれば正解できます。

問3

きょとんとした顔⇒頭の中が「?」になっている

ア:納得して⇒×
イ:間が抜けた表情で⇒表情はこの描写のメインではありません。扱っているのは頭の中の「?」です。
ウ:「理由がわからない」⇒これが「?」ですね。
エ:反感を持ちながらも⇒「?」になっているのであって、反感の描写はありません。

問4

ニヤリと笑った⇒「こうなることは分かっていた」=高尾は、2人の実力を知っていた。

ア:大きな喜び⇒だとすれば「ニヤリ」ではないはず
イ:ふだんはいがみ合っている⇒この時点で2人は良いパフォーマンスをしている⇒×
ウ:予想が的中/助言が的確/⇒これが正解
エ:期待していなかった⇒期待していなかったのであれば、わざわざ立ち位置を入れ替えるようアドバイスすることはないはず⇒×

問5

プロデューサーの気持ち
プロデューサーは十代半ばである真由とミチルを子ども扱いしていました。
相手にしていなかった、期待していなかったことが分かります。
しかし、2人のパフォーマンスを見たあとは「きみたちも見たかっただろう」の「君たち」に含まれています。
この変化を書いている選択肢を探しましょう。

ア:「大きな期待はもっていなかった」⇔「感心する気持ち」 これが正解
イ:「経験を積ませよう」「予想以上の才能」⇒×
ウ:「賛辞の大きさに戸惑い」⇒×
エ:「あきれる気持ち」⇒×

問6

普段は犬猿の仲である真由とミチルは、パフォーマンス中は協力的でしたが、そのあとは「普段」の犬猿の仲に戻ってしまいました。
その変化について問う問題です。

ア:「相手への不信感」⇒仲が悪いのとは違いますね
イ:「日頃反発している」「協力して歌っていた」「互いに相手を意識」⇒これが正解
ウ:「すべて相手のおかげ」⇒×
エ:「自分一人でもやれる」「相手のことが邪魔」⇒×

問7

内容・表現についての問題です。
特定の傍線部に関する問題ではないので、本文全体をしっかり読めているかどうかが問われます。

ア:「桐絵からの視点に限定」⇒ほかの人物の心情も描写されていましたね。
イ:「繊細な心情の移り変わり」「複雑な感情」⇒明確に×とはいえないので保留
ウ:「スポットライトを浴びる人たち」⇔「それを裏で支える人たち」  このような対比はありませんでしたね。
エ:「桐絵の心理描写が中心」「多くの登場人物の会話」「それぞれの人物の思い」

保留にしたイとエを比べます。
問4が高尾、問5がプロデューサーについての設問になっていたことを利用します。
そうすると、エが正しいと判断できます。

今回の解説は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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