2023年度(令和5年度)都立新宿高校自校作成問題・国語大問3解説

2023年度(令和5年度)都立新宿高校自校作成問題・国語大問3解説

こんにちは!都立自校作成校受験対策専門塾・誠学会の諏訪孝明です。

この記事では、2023年2月に行われた都立新宿高校の自校作成問題の国語・説明文(評論文)の問題を解説します。

自校作成校受験生のうち、
・国語で安定して高得点をとるための読み方・解き方を知りたい
・難しい内容の文章に苦戦している
・過去問演習の後、自分の読み方・解き方や理解・解釈が合っているのかどうかを確認したい

といった方におススメです。

なお、今回の解説をより理解するために国語を解くときに気を付けてほしいことをこちらにまとめております。
今回の解説に先んじて読んでおいていただくと理解が深まります。
是非読んでみてください。

また、一度自力で本文を読み設問を解いてから読むことを強くお勧めします。

2023年度 都立新宿高校の国語のその他の大問はこちらをご覧ください。

では、解説をはじめます。

本文

第1段落

・「前者」⇔「後者」の対比構造に注目します。
ここから、方程式に大事なことは
①多くの状況に対応できる普遍性がある
②簡潔に表現されている
の2点であることが分かります。

ゴールド、アインシュタインといった固有名詞は文章全体の主旨には絡まないので深く考えなくてOKです。

段落の要旨:方程式は普遍性があり簡潔に表現されているものが良い。

第2段落

・「AだけでなくB」はBが重要です。
・「すべての物理学者」といった一般論は重要です。
・「こそ」は強調する表現⇒重要⇒最高の理論:①仮説の数が少ない②簡潔③普遍的 
・「普遍にして簡潔」⇒第1段落で述べられていることの繰り返し(反復)=重要。

段落の要旨:物理学の理論は普遍的で簡潔なものが良いものとされる。

第3段落

・その感覚⇒指示語は具体化する⇒普遍にして簡潔な理論に価値を見出す
・「~せざるを得ない」⇒本意ではないor不安があるが、やるしかないということ。
・「こそ」は強調する表現⇒重要
・「から」は因果関係
・「簡明」は第1段落・第2段落の「簡潔」の言い換え
・「~だろうか」⇒筆者の主張があることを示す文末⇒重要

段落の要旨:単純で簡明な理論は多様な展開が可能となる。

第4段落

・「単純」⇒簡明、簡潔の言い換え
・「~かもしれない」⇒筆者の主張があることを示す文末⇒重要
・「~ではなく」は対比を示す 「論理」⇔「感性」
・「だから」⇒因果関係
原因:美しいものを見ると楽しさを感じる
結果:楽しいかどうかで理論の真贋(しんがん)を直感的に判断する
・「~ではないかと思う」⇒筆者の主張があることを示す文末⇒重要
・「こそ」は強調する表現⇒重要
・「重要な要素」⇒筆者が「重要」と言っている内容は、当然重要である。

段落の要旨:物理において審美眼は重要である。美しいかどうかで理論の価値を判断する。

第5段落

・「理由」⇒因果関係は重要
・「三つ」「三つの要素」⇒数字が含まれるものは重要
・「~して初めて…」⇒条件と結果の関係
・「楽しむ」「美を感じる」⇒これまでの段落で述べられたことの反復や言い換え位になっている

段落の要旨:①出発点の意外性②過程の論理性③結論の強固性の3つが揃うと楽しく美しい論文となる。

第6段落

・「誰もが一致して」⇒一般論⇒重要
・「~だろう」=筆者の意見⇒重要
・具体例⇒前後にある筆者の主張が理解できていれば軽く読み飛ばしてOK

段落の要旨:なし(具体例の紹介のみ)

第7段落

・簡潔⇒反復されているキーワード
・要⇒「要点」の「要」⇒重要である
・「多様な現象に適用できる」⇒「多くの状況に対応し得る普遍性」(第1段落)の言い換え
・「誤認している可能性も否定できない」⇒「間違っている!」と指摘している⇒「適用範囲が広ければ重要であり美しい」が間違っている⇒「適用範囲が広い」に加えて簡潔さが必要(第6段落より。)
・「諧調」は聞いたことがない言葉⇒当然意味を知らない⇒「乱調」⇔「諧調」の対比に注目し、「乱れている」の反対すなわち「整っている」と考えましょう。

段落の要旨:簡潔な方程式は条件を変えることで多様な現象に適用できるという普遍性がある。

第8段落

・「ほんの限られた天才」⇔「凡庸な私たち」の対比に注目。
自分の名前が付くような方程式を発見できる⇔偉大な方程式の美を磨き上げる=多様な現象に適用することで普遍性を高める

段落の要旨:私たちは、美しい方程式において条件を変えることで多様な現象に適用してその美を高めることができる。

第9段落

・「~とは」=~の定義を説明するときに用いる表現
ここでは「科学」の定義が説明されている
・「一方で」「他方で」がつくる対比構造に注目する
・「現象」「自然現象」⇔「原理・法則」「説明原理」
・「だろう」「~のである」=筆者の意見⇒重要

段落の要旨:科学とは自然現象とそれを説明する原理・法則とを結びつける営みである。

第10段落

・「二つ」⇒⇒数字が含まれるものは重要
科学、つまり自然現象と原理・法則を結びつける方法①原理⇒現象の演繹法②現象⇒原理の帰納法
・「~に応じて」⇒~が変化する条件であるということを意味する
科学者個人個人の性格によって演繹法・帰納法のどちらを採用するかが変わる

段落の要旨:科学には演繹法、帰納法の2つの方法があり、科学者それぞれの性格に応じてどちらを採用するかが変わる

第11段落

・「~とは」=~の定義を説明するときに用いる表現
ここでは「演繹法」の定義が説明されている
・第10段落で「原理⇒現象」と説明されており、それ以上の深追い(具体例や固有名詞を用いた説明の理解)は不要

段落の要旨:演繹法とは原理から出発して現象に到達する思考法である

第12段落

・「必ずしも~ではない」⇒「~ではないこともあるぞ!」という主張
ここでは、演繹法で用いられる前提が正しいとは限らないという主張(つまり注意喚起)
①経験
②「~であってほしい」「~であるはずだ」「~であるべきだ」という命題
③「神の摂理」「自然の理法」といった前提

注意喚起なので、「用心が必要」「使うべき論法ではない」「注意すべき」「用心すべき」というフレーズが用いられている。

段落の要旨:演繹法を用いる場合の注意点を紹介している。

第13段落

アリストテレス・ガリレオ⇒固有名詞⇒この段落は具体例⇒前後の主張が読み取れていれば軽く読み飛ばしてOK

段落の要旨:アリストテレスが演繹法で失敗した例を紹介している。

第14段落

・「より一般的なものへと拡張していく」「より広い概念に拡張する」⇒「多様な現象に適用することで普遍性を高める」の言い換えであると考える
・「より~になればより~になる」=進化し続けることができる⇒常に進化途上=ゴールはない⇒最終理論は永遠に得られない

段落の要旨:科学は前提の拡張により普遍性を高めていく。常に進化途上であり最終到達地点に到達することは永遠にない。

第15段落

・帰納法の紹介
・第10段落の「現象⇒原理」を紹介している

段落の要旨:帰納法は個々の現象を分析することで原理に至る方法である

第16段落

帰納法のさらなる説明

段落の要旨:帰納法の強みは具体的な事実から出発していることである

第17段落

・「しかしながら」=逆接⇒話の流れが逆方向に変わる⇒直前では帰納法の「強み」が語られている⇒話の流れが逆方向に変わるということは帰納法の「弱み」についての話となる
・「~わけではない」「~わけではない」「制約されている」「断言できない」という表現に注目。
・「~だろうか」⇒①疑問(=テーマの提示)②反語(筆者の主張)の2つの可能性がある
これは直後に答えがあるかどうかで判断する①疑問の場合は直後に答えが提示される。
今回は答えへの言及がないので、反語つまり筆者が「普遍的な原理に到達できるという断言はできない」という主張である。

段落の要旨:帰納法には欠点が多く、普遍的に適用可能な原理への到達は難しい。

第18段落

・「例えば」=具体例⇒軽く読み飛ばしてOK
・強いて言えば、「応用範囲が広いものがまだあるかもしれない」というフレーズが第14段落で述べられている「科学は前提の拡張により普遍性を高めていくから常に進化途上である」の反復であるというところが重要である
・「以上のような例から」⇒具体例の終了、つまり抽象的なまとめ表現の開始の合図となる⇒自然はまだ奥深い謎を秘めている!

段落の要旨:自然はまだ奥深い謎を秘めている

第19段落

・人間の認識には限界がある
・(人間の認識・思考には限界があるため)科学にも限界がある
・「だが」=逆接
・科学者は科学の限界をよく知っている⇒だが⇒なんでも知っているような態度をとる科学者がいる
筆者はこれを「文句を言いたくなる」という言葉で批難している
・「~する必要がある」「強調しておきたい」⇒筆者の主張があることを示す

段落の要旨:人間の認識や科学には限界がある。私たちはそれを常に忘れずに科学や科学者を見る必要がある。

以上が今回の文章の解説です。
段落ごとの要旨を捉えていくと、「同じ話が何度も繰り返されている」「全体で一つの話がなされている」ことが分かると思います。
今回の文章の結論は「科学には限界がある」というものでした。これを知ってから読み直すと序盤の文章の見え方が変わってくることもあります。
演習段階では1つの文章を何度か精読して文章を論理的に読解する思考習慣を身につけましょう。
その際、この記事の解説を適宜参照してください。

設問

問1

方程式を評価する際の項目は
①多くの状況に対応できる普遍性がある
②簡潔に表現されている
の2点です。
第1段落で紹介されている方程式は「①は満たしていたが、②には合格しなかった」とあります。
つまり、普遍性はあるが簡潔ではなかったということですね。

ア:「汎用性がない」⇒×

イ:「普遍性は備えている」「簡潔さに欠けている」⇒〇

ウ:「簡略化しすぎ」⇒×

エ:「整合性に欠ける」⇒今回の内容(問1の内容)に無関係⇒×

問2

「どういうことか」を問う設問です。
分の内容を具体化する必要があります。
具体化の対象は、そのままでは意味がよく分からない表現です。
ここでは「偉大な方程式」「美を磨き上げる」の2つです。
・偉大な方程式=多くの状況に対応できる普遍性があり、簡潔に表現されている(問1参照)
・美を磨き上げる=条件を変えて多様な現象に適用し、普遍性を高めていく
となります。
これを50字以上60字以内で書けばOKです。
例:多くの状況に対応できる普遍性があり簡潔に表現される方程式を、条件を変えて多様な現象に適用して普遍性をさらに高めること。(59字)

問3

演繹法に対して注意すべき点として適切なものと適切でないものを区別する問題です。
演繹法の注意点としては
①経験
②「~であってほしい」「~であるはずだ」「~であるべきだ」という命題
③「神の摂理」「自然の理法」といった前提
からスタートすると危険ということです。

ア:「神の摂理を前提にすると」⇒③に該当⇒正しい

イ:「経験的なもの」⇒①に該当⇒正しい

ウ:「具体的な事象の分析を丁寧に積み重ね」⇒これは演繹法ではなく帰納法の説明⇒適切でない⇒これが正解となる

エ:「前提に合った結果ばかりを準備」⇒「前提が正しいはず」という思い込みに基づく⇒②に該当⇒正しい

問4

最終理論が永遠に得られない理由
⇒より広い概念に拡張することで理論の普遍性が高まり進化していくという過程を永遠に繰り返すことができるから

ア:「自然を斉一なものとして定義する」⇒無関係

イ:「広い概念へと拡張」「より多様な現象が」「科学は常に進化途上」⇒〇

ウ:「新たな実験や観測」⇒不十分

エ:「私たちの経験はあくまで部分」⇒無関係

消去法ではなく、正しいものを探した方が正解しやすい問題だと思います。

問5

「本文中の記述として正しいもの」を選ぶ問題です。

ア:「普遍的な真理」⇒問4の内容「最終理論は得られない」に反する⇒×

イ:「絶対的な科学的真実」⇒問4の内容「最終理論は得られない」に反する⇒×

ウ:「対象によって」⇒本文には科学者個々人が性格によって、とある⇒×

エ:「科学は万能ではない」「謙虚に向き合う」⇒最終段落での主張に合致⇒〇

問6

いわゆる200字作文です。
ポイントは
①本文の主旨を理解する
②それに対する自分の意見を述べる
③②の説得力が増すような事例を考える

の3点です。

①:本文解説で見てきた通りです。科学には限界があり、知らないことはまだたくさんあるということです。
②:「自分の意見」といっても、志望校から「ウチの生徒に相応しい」という評価を得るために作文を書くのですから大人が喜びそうなことを書くべきです。
ここでは、「科学の限界をよく知ったうえで、その限界を少しでも打破すべく研究活動に打ち込みたい」などとなるでしょう。
③:②に相応しい経験・見聞を考えることになります。今回は「科学」という中学校生活ではあまり縁のないものがテーマであるため経験より見聞が良いでしょう。年々発展してそうなジャンルを取り上げて、「年々進化していて、『最新の科学』に基づくとされる主張も変化していっている。」などと書けるのが一番良いですね。
新型コロナウイルスとそれに対応するためのワクチンの開発など、科学の進化として思いついたものを見聞として紹介できると良いです。
200字作文は、テーマによって難易度が大きく異なるのですが今回は適切な経験・見聞を考えるのが難しいことからかなり書きづらい部類の問題だったと考えます。

今回の解説は以上です。
最後までご覧になっていただきありがとうございました。
皆さんの受験対策の一助となれば幸いです。

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