2023年度(令和5年度)都立青山高校自校作成問題・国語大問4解説

2023年度(令和5年度)都立青山高校自校作成問題・国語大問4解説

こんにちは!都立自校作成校受験対策専門塾・誠学会の諏訪孝明です。

この記事では、2023年2月に行われた都立青山高校の自校作成問題の国語・説明文(評論文)の問題を解説します。

自校作成校受験生のうち、
・国語で安定して高得点をとるための読み方・解き方を知りたい・難解なテーマの文章を読解するのが苦手・過去問演習の後、自分の読み方・解き方や理解・解釈が合っているのかどうかを確認したい

といった方におススメです。

なお、今回の解説をより理解するために国語を解くときに気を付けてほしいことをこちらにまとめております。
今回の解説に先んじて読んでおいていただくと理解が深まります。
是非読んでみてください。

また、一度自力で本文を読み設問を解いてから読むことを強くお勧めします。

2023年度 都立青山高校の国語のその他の大問は以下のリンクをご覧ください。

では、解説をはじめます。

文章1

今回は、文章が2つ与えられています。
文章1を読んでいる段階では文章1と文章2とのつながりを意識することはできませんので、普段通り読めば大丈夫です。

第1段落

・「AにはBが不可欠」:Aを実現するにはBが絶対に必要だということです。つまり、強調の表現であり重要であることが分かります。ここでは、「深い思考の実現には経験が絶対に必要である」と書かれています。

・「経験の重要性」:「重要」という言葉が使われているので、「経験」はこの文章において重要なことば=キーワードです。

段落の要旨:深い思考には経験が必要であるため、経験は重要だ。

第2段落

・「タブラ・ラサ」:第1段落・第2段落に登場しています。段落をまたいで登場する語句は重要です。ここでは、「タブラ・ラサ」が「経験主義」と結びつけられていますので、第1段落に続いて第2段落も(そしておそらくこの文章ではずっと)「経験」がキーワードであると判断できます。

・「経験主義」⇔「合理論」:それぞれ「人間は最初は白紙」⇔「もともと生まれ持った観念が存在する」という正反対の立場をとっていますので、対比構造をとっています。この文章は「経験」がキーワードですので、筆者は「経験主義」の方を支持すると予想できます。

・「的を射ている」:これは筆者がプラスの評価をしていることを意味します。ここでは、「経験主義」にプラスの評価をしています。

・「~ではないでしょうか」:これは筆者の主張があることを示す文末です。ここでは、経験主義の正しさを主張しています。

・「~から」:因果関係を示します。ここでは、「誰しも経験によって強く賢くなる」⇒「経験主義が正しいといえる」です。

段落の要旨:「経験主義」という考え方があるとおり、人は経験によって成長していく。

第3段落

・「つまり」:「つまり」の直後には要点がくることが多いです。ここでは、「AIに負けない思考のために経験値を上げる必要がある」と述べられています。

・「ところが」:対比構造をつくります。ここでは、「AI」(経験は不要)⇔「人間」(経験が必要)という対比になっています。

なお、「人間がAIに負けないようにするにはどうすればいいか」は最近の評論文の出題テーマのトレンドです。

段落の要旨:人間がAIに負けない思考をするには経験が必要だ。

第4段落

・「かなわない」:物事を比較し、優劣をつける際に用いる表現です。対比構造を示しています。ここでは、引き続きAIと人間の対比です。

・「しか」:否定語です。ここでは、AIを否定しています。

・必要な情報(AIが得ようとする情報)⇔関連する情報(AIがあまり得ようとはしない=非常に形式的なものにとどまる)

段落の要旨:AIは必要な情報しか得ようとしない。

第5段落

・「これに対して」:対比構造を示します。AIと人間の対比です。前段落が「AIが得ようとするのは必要な情報のみだ」という話だったので、その逆つまり「人間は不必要な情報も得ることができる」となることが予想されます。

段落の要旨:人間は必要な情報だけではなく、関連する不必要な情報を得ることができる。

第6段落

・「特徴・強み」:ここでは、AIと比べた人間の経験の特徴・強みが示されています。そしてそれは「ここ」と指示語で示されているので、第5段落で示された内容です。

段落の要旨:人間の経験は目的に関連しない情報も得ることができる。

第7段落

・「さらに」:要素を追加する際に用いる語句です。ここまで、AIにはない人間の経験の特徴・強みが述べられていたわけですから、それが追加されることが分かります。

段落の要旨:人間の経験には、バイアスがかかるつまり事実をそのまま受け取らす時間が経てば意味を変えるという特徴もある。

第8段落

・「だから」:因果関係を示す言葉です。ここでは、「経験は主観的なもの」⇒「人によって意味が異なる」です。

段落の要旨:経験とは主観的なものであり、人によってその意味は異なる。

第9段落

・「違い」:対比構造を示す語句です。ここでも継続して、AIと人間の対比です。

段落の要旨:経験の意味が人によって、そして同じ人でも時間が経てば変わるのは人間の特徴である。

第10段落

・「AIにはそのようなことはありえない」:AIと人間の対比が続いています。

段落の要旨:人間の経験の意味は刻一刻と変わる。AIにはそのようなことはない。

第11段落

・「まったく質が異なる」:対比構造を示します。「AIが取得する情報」と「人間にとっての経験」の対比です。

・「だから」:因果関係を示します。「経験を基に思考や創造を行う」⇒「人間の思考はユニーク」

・「~であればあるほど…」:変化を起こす条件を表しています。ここでは、「経験が多く、強烈であれば思考がユニークになる」ということです。

・「理由」:因果関係を示します。「経験が多く、強烈であれば思考がユニークになる」⇒「哲学をするには経験値を上げる必要がある」

段落の要旨:AIが取得する情報と人間にとっての経験はまったく異なる。人間は経験を基に思考や創造を行うため、人間の思考は経験が多く強烈であるほどユニークとなる。よって、哲学にも経験が必要となる。

第12段落

・「~しかありません」:限定する表現なので、重要です。ここでは、「人間は思考力でAIに負けないようにするしかない」

・「~べきでしょう」:筆者の主張があることを示す文末です。ここでは、「人間は感情を生かした形での思考力を武器にすべき」です。

段落の要旨:人間がAIに負けないようにするには、感情を生かした形での思考力で勝負するべきである。

第13段落

・「~べきではありません」「~すればいい」:筆者の主張があることを示す文末です。

段落の要旨:人間は思考力で勝負するべきだ。

第14段落

・「ところが」:逆接は対比を示します。ここでは、「人間は弱い」⇔「人間の思考力は強い」

段落の要旨:人間の思考力は強い。

第15段落

・「なぜなら」:因果関係を示します。「人間には感情がありセンシティブであるが、それを生かせばいい」⇒「そうすればAIに負けない」

段落の要旨:人間には感情がありセンシティブであるが、それを生かせばいい

第16段落

・「一言で言うと」:それまで述べてきたことを短い言葉でまとめてくれる際に使う表現です。まとめなので、重要です。

・「~があってはじめて」:条件と結果の関係を表します。「合理的思考と感情のふたつがある」⇒「強靭な思考ができる」

段落の要旨:人間は感情がありセンシティブあるということを武器にできる。感情と合理的思考の2つを駆使して強靭な思考を行う。

第17段落

・・「~があってはじめて」:条件と結果の関係を表します。弱さ=感情、強さ=合理的思考です。

・「~しない限り」:条件と結果の関係を表します。「AIが真の弱さを理解する」⇒「AIが人間の求めるものを提供する」

段落の要旨:思考力を武器にするには、弱さと強さの両方が必要。AIが人間の求めるものを提供するには、弱さを理解する必要がある。

文章2

文章1と関連のある文章であると考えられるので、「AIと人間の対比」や「経験」「感情」などの文章1の骨子が再登場する可能性が高いです。

第1段落

・「もちろん+逆接+主張」:この形は覚えておくと非常に便利なので覚えておきましょう。

・「よって」:因果関係を示します。ここでは、「テキストによる発話の多くはその感情の推測が難しい」⇒「音声など、テキスト以外を用いた感情理解の研究が行われている」

段落の要旨:テキストによる発話の多くは感情の推測が難しいため、音声などを用いた感情理解の研究が盛んにおこなわれている。

第2段落

・「問題」:評論文における「問題」は様々な意味があります。問い、課題、欠点、テーマといった意味になります。ここでは課題だと考えます。

・「よって」:因果関係を示します。「人は感情をそんなに表出しない」⇒「データセットにするのは大変」

段落の要旨:(感情理解の研究を行うための)データを集めるのは難しい。

第3段落

・「ところで」:話題を変えるときに使います。感情理解のコールセンターでの活用に話題が変わりました。

・「つまり」:直後に要点がくる表現です。ここでは「お客様が怒っている通話を見つけること」です。

段落の要旨:感情理解はコールセンターにおいても、お客様が怒っている通話を見つけることに使われている。

第4段落

・「目的」:この言葉は理想の状態を表すので重要です。ここでは、「共感」が理想の状態であり重要であることが分かります。

・「~なくして~なし」:条件と結果の関係を表します。ここでは、「共感」⇒「信頼」です。

・「非常に重要」:文字通り非常に重要です。ここでは、「共感」が非常に重要だとされています。

・「~ではないでしょうか」:筆者の主張があることを示す文末です。ここでは、「会話において共感は非常に多い」という主張です。

段落の要旨:会話内では共感が非常に多く、信頼に必要なため重要である。感情理解の目的は共感である。

第5段落

・「影響」:「AがBに影響を与える」は、変化をもたらすので重要です。ここでは「共感が雑談AIに与える変化」ということになります。

段落の要旨:共感が雑談AIに与える影響を調査している。

第6段落

・「~のほうが…」:対比構造を示す表現です。ここでは「共感するシステム」(満足度が高い)⇔「共感しないシステム」(満足度が低い)です。

・「面白い」:筆者の主観=意見=主張です。
・「つまり」直後に要点がきます。
⇒システムが共感すればするほどユーザーも共感する

・「極めて重要」:文字通り極めて重要です。ここでは「共感するとユーザーの共感(相手を気にかけ、相手がどう思っているのかを考えるという行動)を引き出すことができるので信頼関係の構築に極めて重要である」ということです。

段落の要旨:共感はユーザーの共感を引き出すことができ、信頼関係の構築に極めて重要である。

第7段落

・「AだけでなくB」:Bが重要です。ここでは、経験に裏打ちされた共感の重要性を示しています。

段落の要旨:経験に裏打ちされた共感が重要である。

第8段落

・「本当に~のか」:問いかけはテーマを示します。最終段落で新しいテーマが示されており、それは「ロボットや対話システムに共感ができるのか」というものです。

・「~とは言えない」「でしょう」:筆者の主張があることを示す文末です。ここでは、「現在の雑談AIには真の意味である共感はできていない」としています。

段落の要旨:現時点では、AIには共感はできていない。

設問

問1

「AIの情報」⇔「人間の経験」の対比構造に注意して本文を読めているかどうかを問う問題です。
人間の経験には、
・無関係なものも含まれる(AIの情報は必要な情報のみ)
・人によって意味が異なる
・時間が経つと意味が変わる
という特徴があります。これを述べている選択肢を選びましょう。

・「常に最新」⇒×

・「過去をさかのぼりながら」「異なる複数のものを」⇒×

・「遠い近い」「回数」「年齢」⇒×

・「条件に当てはまるものだけ」「個別的」「時間の経過とともに意味が変化」⇒〇

問2

人間の弱さ=感情がありセンシティブであること。
これにより思考を深めることができるとされている。

・「繊細な感情」「AIに対抗できる思考」⇒〇

・「繊細さに欠ける」⇒×

・「取るに足らないことで」⇒×

・「真に幸せになる生き方を提案できる」⇒×

問3

意図についての問題です。
文章は、主旨と主旨の説得力を増すための説明で成り立っています。
傍線部3は文章全体の主旨ではありません。
この文章全体の主旨は「会話では共感が重要だが、今のAIには真の共感はできていない」というものになります。
よって、この主旨の説得力を増すためというのが意図になります。

・「人と自然な会話ができる」⇒×

・「機械にはまねできない」⇒×

・「解析する機械が必要」⇒×

・「まだ課題が多い」⇒〇

問4

記述ですが、「傍線部4以降の語句を用いて」という指定があるので書くべき内容を本文中から探しやすいです。
ここでは、「なぜ信頼には共感が必要なのか」についての答えを指定された箇所から探します。
第6段落に「極めて重要」という表現があり、そこには「共感することにより~な行動を引き出しうることは、信頼関係を築く上で極めて重要」とあります。
ここをまとめればOKですね。

例:信頼関係構築に必要な相手を気に掛け、どう思っているか考えるという行動を引き出しうるから。(44字)

問5

経験に裏打ちされた共感が必要(文章2)=「Aを理解してBすることが重要」(文章1)

文章1において、「○○を理解すべきだ」という主張がされている箇所を探します。
すると、第17段落(最終段落)に「真の弱さを理解しない限り…」とありますのでAは「理解」です。

また、Bにはいるものは例えば「人間の求めるものを提供する」ですが、これは文字数が合いません。この前後から、これと同じ内容を17文字で述べている箇所を探します。
すると、「人間のことや人間社会のことを考える」が見つかります。これがBです。

問6

都立高校入試国語におなじみの200字作文です。
今回は、
・文章1の主張:人間は感情に基づいた思考ができる。それがAIにはない強みだ
・文章2の主張:会話では共感が重要だが、今のAIには真の共感はできていない
・生徒たちの会話
A:AIの能力は優れている
B:感情を理解することはAIにはできない(文章1・2の主旨を踏襲)
C:AIはデータを蓄積すれば感情を理解できそう
D:感情を理解するAIは実現しそう
E:AIには感情理解は難しそう
これらを基に「AIが発達した社会における人間の役割」について考えます。

文章1・文章2・B・E(AIには感情・共感は難しい)⇔A・C・D(AIは優れているから今後なんとかなりそう)
このどちらかの立場に立って書きましょう。
制限時間の中で迅速に書くには、本文の筆者の主張に賛成しつつ書くのが良いです。
したがって、今回は例えば
・文章1・2によるとAIには感情を理解したり共感しながら会話することが難しい
・私もそれに賛成
・ということは、AIが発達した社会における人間の役割は相手に共感するコミュニケーションによって相手の心を動かし、成長を促すことである
といった内容を書くと良いでしょう。
もちろん、他にもいろいろなパターンが考えられます。
あなたなりに考えて、書いてみましょう。

今回の解説は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

都立青山高校に合格するなら自校作成専門対策塾 誠学会

都立青山高校は自校作成問題を出す高校の中で1,2を争う受験者数が多い人気校になります。内申点はオール5の生徒がほとんどを占め、ハイレベルな対策が必要になります。具体的な対策が知りたい方は、ぜひ誠学会にお問い合わせくださいませ。

都立自校作成校受験対策専門塾・誠学会では、
毎月10名限定で無料受験相談を受け付けています。