こんにちは!都立自校作成校受験対策専門塾・誠学会の諏訪孝明です。
この記事では、2023年2月に行われた都立青山高校の自校作成問題の国語・物語文(小説)の問題を解説します。
自校作成校受験生のうち、
・国語で安定して高得点をとるための読み方・解き方を知りたい
・物語文が苦手
・過去問演習の後、自分の読み方・解き方や理解・解釈が合っているのかどうかを確認したい
といった方におススメです。
なお、今回の解説をより理解するために国語を解くときに気を付けてほしいことをこちらにまとめております。
今回の解説に先んじて読んでおいていただくと理解が深まります。
是非読んでみてください。
また、一度自力で本文を読み設問を解いてから読むことを強くお勧めします。
2023年度 都立青山高校の国語のその他の大問は以下のリンクをご覧ください。
では、解説をはじめます。
目次
- 1 本文
- 1.1 ラッキー/うれしそう
- 1.2 傷ついた
- 1.3 めげなかった
- 1.4 こうして今ここにいる
- 1.5 愉快そう
- 1.6 深呼吸をひとつして
- 1.7 断る
- 1.8 薄暗い道
- 1.9 さっきまでとは一変して
- 1.10 おれのことは気にしないで/おれがそうしたい
- 1.11 楽しい
- 1.12 まだ一人前の職人とはいえない/未熟なふたり
- 1.13 やってみたい/~すればいい/~しよう
- 1.14 反対に
- 1.15 いつかは虹に座れる/晴れやかな気持ちで世界を見渡せる
- 1.16 身じろぎもせずに/まじまじと/目をそらさなかった/そらすつもりはなかった
- 1.17 小学生みたいに
- 1.18 魚は一匹も釣れない
- 1.19 おかしいなあ/ぶつくさ/恨めしげ
- 1.20 反撃
- 1.21 甘えない、頼らない、投げ出さない
- 1.22 あせらない、考えすぎない、他人のせいにしない
- 1.23 拍子抜け
- 1.24 驚いてくれた
- 1.25 今度は徳井が黙る番
- 1.26 安請け合い/妄想⇔目標は高く/夢
- 1.27 それぞれの三か条を守りきれているとはいえない
- 1.28 ただし
- 1.29 うまくいかない
- 1.30 うらやましげ
- 1.31 魚住が腰を上げた⇔徳井は反対(やめとけよ)
- 1.32 ふたつ仲よく
- 2 設問
- 3 都立青山高校に合格するなら自校作成専門対策塾 誠学会
本文
今回は前文がありません。
つまり、主要な登場人物がどんな名前・年齢・職業・境遇なのかをすべて文章から読み取る必要があります。
手探り状態で読み進めることになりますので、いつも以上に考えながら読む必要があります。
ラッキー/うれしそう
魚住の描写。
虹が出たことがきっかけ。
虹の上に座ってみたかった⇒「また夢みたいなこと」(メルヘンチックな内容)⇒「魚住らしい」
ということは、魚住は子どもっぽい性格と思われる。
傷ついた
「虹の上に座ってみたい」と言った魚住に対し、父が馬鹿にしたことに対しての魚住の反応です。
繊細な性格なのかもしれません。
めげなかった
引き続き魚住の反応です。
傷つきはしたが、めげなかったとのこと。
魚住にはある程度の強さがあるようです。
こうして今ここにいる
前文がないせいで、この時点では魚住が何者で、どんな状況におかれているか不明です。
したがって、これから「ここ」とはどこを指すのかを考える必要があるのだなと考える必要があります。
愉快そう
魚住の実際の状況ではなく、徳井の妄想の中の魚住ですが魚住の描写であることに変わりありません。
やはり、魚住は子どもっぽく無邪気な性格のようです。
深呼吸をひとつして
リラックスしようとしている⇒緊張している
という状況を指すことが多いです。
徳井は緊張しているようです。
断る
何を断るのか、この時点で不明です。
分からない状態で読み進める必要があります。
状況が分からなくても、魚住・徳井の心情を追いかけられればそれでよいという割り切りが必要です。
薄暗い道
先ほどまで「雨上がりの虹」という描写=明るい描写でしたが、一転して暗い描写になりました。
深刻な話が始まるようです。
さっきまでとは一変して
同じく、一転して深刻な話が始まることを示しています。
声も表情もこわばっているという描写からもそれが伝わってきます。
おれのことは気にしないで/おれがそうしたい
魚住:徳井は自分のことを気にして断ろうとしている
徳井:自分がそうしたいから断ろうとしている
楽しい
徳井は魚住と一緒に椅子づくりをしていることを楽しんでいるとのことです。
2人の職業がかなり具体的になりました。
まだ一人前の職人とはいえない/未熟なふたり
2人の職業がさらに具体的になりました。
見習いの椅子職人のようです。
やってみたい/~すればいい/~しよう
2人の前向きな様子が伝わってきます。
反対に
2人が正反対の性格で、それぞれ全然違う課題を抱えていることがわかります。
こうした「対比」を表す表現は絶対に見逃してはなりません。
きちんと整理してから先に進みましょう。
設問に関わる可能性が高いからです。
魚住
・細かい加工が苦手⇒徳井が辛抱強く教える必要あり
・計画通りに作業を進めるのが得意ではなさそう⇒工程管理を徹底する必要あり
・顧客の開拓や接客が得意⇒徳井はこれを魚住から学ぶ必要がある
徳井
・顧客の開拓や接客が(魚住と比べて)苦手
魚住は子どもっぽい性格が描写されていますが、それを活かして他人とのコミュニケーションが得意なようです。
いつかは虹に座れる/晴れやかな気持ちで世界を見渡せる
虹に座るのは魚住の子どもの頃の夢・あこがれです。
それができるということは、「いつかは一人前の職人になれる」「2人の目標が達成できる」という意味です。
ここまで読むと、「断る」が別の工房からの引き抜き・移籍の打診を断るという意味だと分かります。
身じろぎもせずに/まじまじと/目をそらさなかった/そらすつもりはなかった
2人の真剣な様子が伝わってくる描写です。
小学生みたいに
魚住の描写です。
やはり、子どもっぽい・無邪気な描写がなされています。
描写が一貫しているので、彼の人となりをつかみやすいですね。
それでいて、真剣な様子が描写されることもありますので職人を目指すにあたって「子どもっぽさ」つまり真剣でないということはなさそうです。
魚は一匹も釣れない
行間があいています。
ここで場面が切り替わります。
急に魚釣りの場面になっているので、「2人で魚釣りにでも行ったのかな」と思いながら読み進めることになります。
おかしいなあ/ぶつくさ/恨めしげ
魚住の反応です。
魚が釣れず、この反応です。
やはり子どもっぽいですね。
反撃
徳井が魚住にリアクションしています。
「反撃」という言葉を使ってはいますが、2人は仲良く釣りをしているようです。
なにより、仕事以外の時間も一緒にいるというのは仲が良い証ですね。
甘えない、頼らない、投げ出さない
魚住の誓い、約束です。
こういう約束をするということは、魚住には「他人に甘えてしまう」「他人に頼ってしまう」「投げ出してしまう」という欠点があるようです。
魚住には「細かい加工が苦手」「計画通りに作業を進めるのが得意ではない」という欠点があるので、それと組み合わせて考えましょう。
あせらない、考えすぎない、他人のせいにしない
こちらは徳井の誓いです。
徳井は「焦ってしまう」「考えすぎてしまう」「他人のせいにしてしまう」という欠点があるようです。
拍子抜け
進藤への断りの連絡に対する薄いリアクションに拍子抜けしたとのことです。
他の人間もリアクションが薄く、拍子抜けしたとのことです。
驚いてくれた
菜摘の反応です。
「~してくれた」はプラスの感情のときに使います。
徳井は、断ったことを周囲に驚いてほしかったようですね。
今度は徳井が黙る番
魚住の発言に対し、徳井が言い返せず黙りました。
ここまで魚住の子どもっぽさ、無邪気さの描写が目立ちますが魚住が徳井をやりこめることもあるようです。
安請け合い/妄想⇔目標は高く/夢
2人の正反対な価値観が描写されています。
魚住は子どもっぽい無邪気な性格ですから、徳井はその逆つまり内向的で現実的な性格をしていると考えられます。
それぞれの三か条を守りきれているとはいえない
魚住:難しい細工⇒弱音を吐く
徳井:注文の入らない日が続く⇒憂鬱になる
といったかたちで2人はそれぞれの欠点を克服できてはいないようです。
ただし
ここで流れが変わるようです。
前向きな流れに変わりそうですね。
魚住:これやって⇒これ教えて
他人に甘えず・頼らずに、教わって自分の力で細工を頑張っているようです。
徳井:じっくり確認
あせらずに確認することができるようになっているようです。
うまくいかない
押し問答になる、一蹴する、納期の直前に異様に忙しくなるなどまだまだ未熟な2人はうまくいかないことも多いようです。
うらやましげ
魚住の反応です。
おじいちゃんたちは釣れているのがうらやましいようです。
一方、2人は釣れていません。
対照的な釣果ですね。
2人はうまくいかないことも多いようで、釣りにそれが表れているようですね。
魚住が腰を上げた⇔徳井は反対(やめとけよ)
魚住はおじいちゃんたちに声をかけにいきました。
子どもっぽい、無邪気な魚住らしい行動ですね。
徳井はそれに反対します。
これも、魚住とは正反対の特性をもつ徳井らしい対応ですね。徳井が顧客の開拓や接客(つまりは他人とのコミュニケーション)が苦手であることが改めて伝わってきます。
ふたつ仲よく
正反対な2人ですが、これからも協力して一人前の職人を目指していくようです。
設問
問1
魚住の人柄についての問題です。
本文の描写で、再三「子どもっぽい」「明るく前向き」といったものがありました。
それをもとに考えましょう。
なお、傍線部1前後の描写のみで考えてはだめです。本文全体から考えましょう。
ア
「楽観的」「無邪気」⇒〇
イ
「具体的な努力をしない」⇒努力をしている描写がありました⇒×
ウ
「無責任な人」⇒細工を頑張る等、努力をしています⇒×
エ
「甘さを指摘されても意に介さず」⇒欠点を克服しようと頑張っています⇒×
問2
これも傍線部前後だけでは解けないようになっています。
最後まで読めば、「引き抜きを断ることを伝える」直前の緊張感が伝わってきます。
ア
「幻想的」(虹)⇔「現実的」(椅子づくり)
これからする話は椅子づくりの話ではありません。引き抜きを断る話です。×。
イ
「楽しいからだと改めて告げるのは」⇒断る話がメインです⇒×
ウ
「どこにも行かず」⇒引き抜きを断ることへの言及があります⇒〇
エ
「魚住に否定されるのではないか」⇒そう思っていることを示す描写はありません⇒×
問3
「小学生みたいに」⇒魚住が無邪気に喜んでいる様子が伝わります。
徳井がこれからも一緒に椅子づくりをしてくれることが嬉しいのでしょう。
ア
「全くの予想外」⇒これだと、魚住が徳井のことをまったく信じていなかったことになり違和感があります。
他にもっと〇に相応しい選択肢があればそちらを選んだほうがよさそうです。
イ
「自分自身が情けなく投げやり」⇒喜びとは全然違う感情です⇒×
ウ
「うれしさを隠しきれない」⇒〇
エ
「いらだち」⇒喜びとは全然違う感情です⇒×
問4
誓いを立てた後の魚住の様子ですが、誓いの内容について
魚住は
・細かい加工が苦手⇒徳井が辛抱強く教える必要あり
・計画通りに作業を進めるのが得意ではなさそう⇒工程管理を徹底する必要あり
という状況であり、その後
これやって⇒これ教えて
からわかるとおり、他人に甘えず・頼らずに、教わって自分の力で加工を頑張っているようです。
これを書きましょう。
例
細かい加工を徳井に頼りっきりにせず教わって自分でもやる(27字)
といった文になります。
問5
「ふたつ仲よく」⇒正反対な2人ですが、これからも協力して一人前の職人を目指していくことが示されています。
ア
「安定していないものであることを強調」⇒「仲よく」が無視されている⇒×
イ
「他は釣れている」⇔「まだ何も釣れていない」 この対比はあった
「希望」⇒前向きな表現⇒×とは言えない
他に良い選択肢がなければこれが正解
ウ
「いさかいが絶えない」⇒「波」には「波乱」などの意味もあるので、その可能性もあるが「かすかな」波なのでこれは言い過ぎと考えられる⇒×
エ
「二人が独立していく」⇒×
今回の解説は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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