2023年度の東京都立戸山高校の推薦入試では、受験生が資料を正確に読み取り、論理的にまとめる力が求められます。
小論文問題は、受験生が与えられた情報を基にして、自らの意見や考察をまとめる形式です。
大問1では、人口増加率や人口構成についての理解を深め、他地域と比較する力が試されました。
この記事では、この問題の詳細な解説を行います。
大問2では「原子の構造と安定性」に関する問題が出題され、原子核の構成要素や安定性について理解する力が求められました。この問題は、資料に示された図表をもとに原子核の構造や安定性の特徴を論理的にまとめる必要があります。
問題は以下からご覧ください。
目次
資料1、資料2、資料3、資料4、資料5、資料6の概要と解説
資料1
【資料1】は、2015年から2020年の5年間における東京都、秋田県、および全国の人口とその増減を示しています。
東京都の人口は5年間で約53万人増加し、3.9%の増加率を記録しています。
対照的に、秋田県は人口が約6.2%減少しており、全国平均では約0.7%の減少です。
このデータから、東京都は全国の中で顕著な人口増加を見せている一方で、秋田県のような地方は人口減少が深刻であることがわかります。
資料2
【資料2】は、東京都、秋田県、全国の人口ピラミッドを示しています。
東京都の人口構成は若年層と働き盛りの世代の割合が高く、人口のバランスが比較的整っています。
秋田県は高齢者の割合が非常に高く、少子高齢化が進んでいることが一目でわかります。
全国の人口ピラミッドは、東京都と秋田県の中間的な構成を示しており、高齢化と人口減少が徐々に進んでいることが読み取れます。
資料3
【資料3】は東京都内の市区町村における人口増加率の分布(2015年から2020年)を示しています。
各地域ごとの人口増加率が視覚的に表示され、プラスの値は人口増加、マイナスの値は人口減少を示します。
この資料からは、東京都内でも地域によって人口動態が異なることがわかります。
中央区や千代田区など都市部では人口増加が顕著である一方、奥多摩町や檜原村などの郊外地域では人口減少が見られます。
都市部は利便性の高さや経済活動の活発さから人口が増加する傾向にあり、郊外地域は人口流出や少子高齢化の影響を受けて減少しています。
資料4
【資料4】はA地域(奥多摩町、檜原村)とB地域(千代田区、中央区)の年齢別性別人口構成図(人口ピラミッド)です。
これにより、各地域の年齢層の分布が視覚的に示され、人口の若年層や高齢層の割合が見て取れます。
A地域(奥多摩町、檜原村)は高齢者の割合が高く、少子高齢化が進んでいることがわかります。
このような地域では、若者が都市部に流出し、地域の活力が失われる傾向があります。
一方、B地域(千代田区、中央区)は働き盛りの人口が多くなっています。
これにより、経済活動が活発であるものの、住環境や公共サービスの過密が課題となります。
資料5
【資料5】は檜原村に関する新聞記事で、地域の現状や取り組みについて述べられています。
例えば、人口減少に伴う過疎化や、それに対応するための地域再生の取り組みが記載されていることが想定されます。
この資料は、具体的な地域の課題と、それに対する取り組みの例を示しており、地域の人口減少が引き起こす社会問題や、それに対応する施策を理解するのに役立ちます。
例えば、過疎地域では地域活性化のために観光資源の開発や移住者の受け入れが行われている可能性がありますが、十分な効果を発揮できていない場合もあります。
資料6
【資料6】は23区内の昼夜間人口比率(2015年)を示した資料です。
昼夜間人口比率は、夜間人口100人に対する昼間人口の割合で、地域ごとの人口移動の傾向を示しています。
この資料から、23区内の各地域が昼間にどれだけ人口が増加するかがわかります。
特に千代田区や中央区のようなビジネス街では昼間人口比率が高く、昼間の人口過密が問題となります。
これは、通勤や通学による人の流入が大きいことを示しており、交通機関の混雑や公共インフラの負担増などの課題が発生します。
問1の解説と解答例
問1では、【資料1】および【資料2】を使用して、東京都の人口増加率や人口構成の特徴を説明することが求められています。
秋田県および全国と比較することが必要で、資料から読み取れる情報を論理的にまとめることがポイントです。
- 東京都の特徴:人口が増加しており、若年層の割合も高い。
- 秋田県の特徴:人口が減少し、高齢化が進んでいる。
- 全国の特徴:人口減少はあるものの、東京都と秋田県の中間的な構成。
解答例
東京都は2015年から2020年にかけて人口が3.9%増加しており、他県からの若年層の流入によって若年層や働き盛りの世代が多くなっています。一方、秋田県は6.2%の人口減少を記録し、高齢化が進行しています。全国は0.7%の人口減少で、東京都と秋田県の中間的な構成を示しており、高齢化と人口減少が進んでいます。
(154文字)
問2の解説と解答例
問2では、【資料3】から【資料6】を使って、東京都内のA地域(奥多摩町、檜原村)とB地域(千代田区、中央区)の人口増加率や人口構成の特徴について述べ、そこから生じる問題について考察することが求められています。
地域ごとの特徴を読み取り、それぞれの課題を論理的に説明する必要があります。
・A地域(奥多摩町、檜原村)
人口減少が進み、高齢化が進行していることが予測されます。
これにより、地域経済の衰退や社会サービスの維持が困難になる問題が生じます。
・B地域(千代田区、中央区)
昼夜間の人口比率が高く、働く人が多いことから、昼間人口が夜間人口を上回る傾向があります。
このことは、住環境の過密や交通渋滞、インフラの負荷を引き起こす可能性があります。
解答例
A地域の奥多摩町と檜原村では、人口減少と高齢化が進んでおり、地域の活力が低下し、医療や福祉サービスの提供や社会資本の維持が課題です。一方、B地域の千代田区と中央区では昼夜間人口比率が高く、昼間人口の過密化により交通渋滞や満員電車の発生、そして昼間に発生した大規模な災害での避難場所確保を難しくすると考えられます。
(156文字)
まとめ
戸山高校の推薦入試の小論文では、与えられた資料を正確に読み取り、論理的に答えをまとめる力が求められます。
今回の「人口増加率や人口構成」に関する問題では、資料1と2から東京都の人口動態を分析し、他地域と比較すること、さらに地域ごとの課題を論じることが重要です。
小論文では、資料に基づいた論理的な考察を行い、明確で説得力のある文章を作成することがポイントです。
問題2の概要
問題2は以下の資料を使って原子の安定性に関する知識を問う内容です。
- 図1:原子の構造
- 図2:いくつかの元素の原子構造と表記方法
- 表1:安定な原子の陽子数と中性子数
- 図3:安定な原子の陽子数と中性子数の分布
設問では、陽子と中性子のバランスによる原子核の安定性についての理解と、安定性が原子番号によってどのように変化するかを論理的に説明することが求められます。
図1、図2、表1、図3の概要と解説
図1
図1は、原子の基本的な構造を示しており、原子核とその周囲を回る電子の配置が表されています。
原子核は陽子と中性子で構成されており、陽子は正の電荷を持ち、中性子は電荷を持たないという性質がわかります。
陽子と中性子の存在によって原子核が構成されていること、陽子は電気的に反発するが中性子は引力として働くことが理解できます。
この図は、原子が基本的な構成要素(陽子、中性子、電子)によって成り立っていることを視覚的に理解する助けとなります。
図2
図2は、いくつかの代表的な元素について原子構造と元素記号を用いた表記を示しています。
水素(H)や炭素(C)の陽子数と中性子数の違いが視覚的にわかります。
この図から、同じ元素でも異なる中性子数を持つ「同位体」が存在することがわかります。
同位体は陽子数が同じでも中性子数が異なるため、安定性が変わることがあります。
図2の情報は、原子核内の陽子と中性子の数が原子の安定性にどのように影響するかを考える手助けとなります。
表1
表1は安定な原子における陽子数と中性子数の組み合わせを一覧にしたもので、原子番号ごとに中性子の数がどのように異なるかが示されています。
陽子数が少ない場合、中性子の数も陽子とほぼ同じですが、陽子数が多くなるにつれて中性子数が多くなる傾向が見られます。
この表から、陽子が多くなると原子核を安定させるために中性子が増加し、陽子間の電気的な反発を抑制していることが読み取れます。
図3
図3は安定な原子の陽子数と中性子数の分布を示したグラフで、陽子数と中性子数の比率がどのように変わるかが視覚的にわかるようになっています。
グラフでは、陽子数が小さい原子では陽子と中性子がほぼ同数で安定しますが、陽子数が大きくなると中性子数が増える傾向が見られます。
これは、陽子間の反発を中性子が引きつける力で抑えているためであり、原子番号が大きくなるほど中性子が安定性に必要な役割を果たしていることがわかります。
問いの解説と解答例
設問では、表1と図3の情報をもとに、安定な原子核の陽子数と中性子数の違いを説明し、その理由も合わせて記述することが求められています。
特に原子番号が小さいときと大きいときで中性子数がどのように異なるか、その意味を考えることがポイントです。
・原子番号が小さい場合
陽子数と中性子数がほぼ同数でも安定しています。
これは、陽子数が少ないため陽子同士の反発力が小さく、中性子による引力が少なくても安定性が保たれるからです。
・原子番号が大きい場合
陽子数が増加するため、反発力が大きくなり、それを抑えるために中性子が増えています。
中性子は陽子の反発を抑え、原子核を安定させる「接着剤」としての役割を果たします。
解答例
原子番号が小さい場合、陽子数と中性子数がほぼ同数で安定しており、陽子同士の反発力が少ないためです。しかし、原子番号が大きくなると陽子同士の反発力が増大するため、より多くの中性子が必要となります。中性子は陽子間の反発を抑える役割を持つため、大きな原子番号の原子ほど中性子数が多くなることで安定性を保っています。したがって、安定な原子核の中性子と陽子の比率は原子番号によって変化します。
まとめ
戸山高校の推薦入試小論文では、資料を正確に読み解き、論理的に説明する力が重要です。今回の「原子の安定性」に関する問題では、原子番号によって異なる陽子と中性子のバランスの理解が求められました。小論文を書く際には、具体的なデータに基づき、論理的に説明することが
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都立戸山高校の推薦入試における小論文はとても難しいです。具体的な対策が知りたい方は、ぜひ誠学会にお問い合わせくださいませ。