都立戸山高校推薦入試小論文解説・令和4年度(2022年度)第2問

2022年度(令和4年度)都立戸山高校推薦入試小論文大問2解説

東京都立戸山高校の推薦入試では、小論文を通じて資料を読み解く力や、論理的に考察する力が求められます。
2022度の問題では「台風の統計」がテーマに取り上げられました。
この問題は、与えられたデータをもとに台風の影響を地域ごとに比較し、その違いの理由を地理的・気象的な視点から考察する内容です。
中学生が自然現象を科学的に理解し、データをもとに説明する力を鍛える良い課題といえます。

 問題は以下からご覧ください。

また、2022年度都立戸山高校の小論文大問1の解説の記事は以下をご覧ください。

問題2の概要

問題の主題は「台風の接近数とその違いの理由」です。
問題2では、与えられた表、図1(統計データ)、図2(天気図)を参照し、以下の2つの問に答えることが求められています。

問1

沖縄・奄美地方と関東甲信地方の月別台風接近数のデータを比較し、それぞれの地域でどのような特徴があるのかを述べる必要があります。

問2

月別台風接近数の違いが生じる地理的・気象学的な要因を、図1と図2から読み取り、論理的に説明する必要があります。

出題意図

この問題では、与えられたデータや図を正確に読み取る力と、それをもとに地域間の違いの理由を論理的に説明する力が試されています。
特に、気象データを扱うことで、自然現象の仕組みを科学的に考察する力を養うことが目的です。

表、図1、図2の概要と解説

表の概要と解説

概要

表では沖縄・奄美と関東甲信地方の月別台風接近数が示されています。

①沖縄・奄美

  • 6月~10月が台風接近のピークです。
  • 特に7月から9月は接近数が多く、最盛期は8月。
  • 沖縄・奄美地方は台風の発生ポイントに近いため、比較的早い段階から台風の影響を受けやすい地域です。

②関東甲信地方

  • 8月~10月が台風接近のピーク。
  • 最盛期は10月で、9月も接近数が多い。
  • 6月~7月は接近数が少ない。

解説

沖縄・奄美地方は、台風が発生する南西諸島や南シナ海からの距離が近いため、台風が強い勢力を保ったまま接近しやすいです。
また、台風が沖縄・奄美地方を横切るケースが多く、接近数が多くなる傾向にあります。

台風が日本本土に接近するには太平洋高気圧の位置が関係しています。
夏の盛りには高気圧が強いため、台風は日本列島を避けるように進むことが多いです。
秋になると高気圧が弱まり、台風が偏西風に乗って日本本土へ進むルートが増えるため、関東甲信地方での接近数が増加します。

図1の概要と解説

概要

ある夏の日の天気図を、4日連続で掲載しています。
沖縄・奄美に接近した台風が、北西に進路を変えています。

解説

ここで、夏の天気図の特徴である太平洋高気圧に注目しましょう。
すると、夏は太平洋高気圧の存在が関東甲信地方への台風接近を防いでいるのではないかと考えることができます。

図2の概要と解説

概要

ある秋の日の天気図を、4日連続で掲載しています。
沖縄・奄美に接近した台風が、北西に進路を変更することなく関東甲信地方に接近しています。

解説

夏との比較をして、太平洋高気圧がないことが秋に関東甲信地方への台風接近が多くなる要因であることがわかります。

問1の解説と解答例

解説

問1では、沖縄・奄美と関東甲信地方の台風接近数の月別違いについて説明する必要があります。
ポイントは、接近数のデータから地域ごとの違いを具体的に説明し、それぞれの特徴を明確に述べることです。
また、合計の違いにも言及しておきたいです。

解答例

沖縄・奄美地方は台風の発生源に近いため、年間に接近する台風の数も関東甲信地方の2倍以上となっているのが特徴であり、特に6月から10月に集中している。一方で関東甲信地方では、台風が進路を北寄りに変える時期である8月~10月に接近数が多くなる。

問2の解説と解答例

解説

図1と図2の天気図の違いに注目しましょう。
図1は夏、図2は秋の天気図です。
中2理科で、それぞれの季節の天気図について特徴を学んだと思います。
夏の天気図の特徴は覚えていますか?
そう、太平洋高気圧の存在です。
図1の8月27日・8月28日の天気図をよく見てみると、8月28日に太平洋高気圧が登場して台風の進路を北西に変更させていることがわかります。
一方、図2の天気図では、いずれの日付のものにも太平洋高気圧が登場していません。
進路を北西に変更させる要因がないので、台風が関東甲信地方に上陸しています。

また、そもそも台風が南で発生するため南にある沖縄・奄美に接近しやすいという話にも言及しておきましょう。

解答例

沖縄・奄美地方は、台風が発生する南西諸島や南シナ海からの距離が近いため、台風が接近しやすい。夏は太平洋高気圧が台風の進路を北西に変更させることが多いため沖縄・奄美に接近した台風が関東甲信地方にも接近するケースが少ないが、秋は太平洋高気圧がないため台風の進路を北西に変更させる要因が弱く、関東甲信地方に台風が接近するケースが多くなるから。

まとめ

今回の小論文では、台風接近数の地域差とその理由を考察する内容が問われました。
沖縄・奄美と関東甲信地方の接近数の違いは、地理的要因と気象的要因から説明できます。
この問題を通じて、データや図表を基にした論理的な考察の重要性を学ぶことができました。
小論文では、具体的なデータを活用しながら簡潔かつ的確に説明する力を身につけることが重要です。

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