東京都立戸山高校の推薦入試では、与えられた資料をもとに自分の考えを論理的に述べる力が問われます。
2022度の問題1では、「鎌倉時代から室町時代にかけての産業や経済の発展」をテーマに、産業や技術の発達、貿易、流通の3つの視点から資料を読み解き、200~250字でまとめることが求められました。
この問題では、歴史的背景の理解と、資料に基づく考察力が試されています。
問題2では「台風の統計」がテーマに取り上げられました。
この問題は、与えられたデータをもとに台風の影響を地域ごとに比較し、その違いの理由を地理的・気象的な視点から考察する内容です。
中学生が自然現象を科学的に理解し、データをもとに説明する力を鍛える良い課題といえます。
問題は以下からご覧ください。
目次
問題1の概要
問題文の指示
【資料A】【資料B】【資料C】【資料D】を参照して、鎌倉時代から室町時代にかけての産業や経済の発展について、技術の発達、貨幣、流通という3つの側面から200~250字でまとめなさい。
この問題は、3つの具体的な観点(技術、貨幣、流通)について、資料から読み取れる情報を整理し、適切に説明することが求められます。
資料の概要と解説
資料A
資料Aは「石山寺縁起絵巻」の一部で、水車が描かれています。
この絵巻は、当時の技術の発展を視覚的に伝える重要な資料です。
絵巻に描かれている水車は、当時の新しい技術の代表例です。
このような新しい技術の登場は、産業全体の発展を支えたと考えられます。
資料B
資料Bは伊予国内の船荷積載船を示す記録で、兵庫港への輸送が行われていたことが分かります。
これには、各種物品と関料が記録されており、物品が遠隔地へ流通していた様子とそれには貨幣が必要だったことがわかります。
この資料は、鎌倉時代から室町時代にかけて流通網が広がり、海上交通を利用した物流が盛んだったことを示しています。
また、兵庫港のような中継地が経済活動の拠点として機能していたこともわかります。
そして、商品の流通実現には貨幣が必要だったことがわかります。
資料C
資料Cは「一遍上人絵伝」の一部で、庶民や商人が日常生活や商取引を行う様子が描かれています。
商人たちが集まり、物品を交換する様子は、市場や定期市の発展を反映しています。
こうした市場の発展は流通の拡大を示し、商業活動が経済を活性化させていたことがわかります。
また、貨幣による取引が人々のあいだに浸透していたことが考えられます。
資料D
資料Dは今川了俊の『道行きぶり』からの引用で、鎌倉・室町時代における福岡の庶民の生活について言及されています。
この資料からは、当時の福岡の人々の暮らしが豊かなものであったことがわかります。
設問の解説と解答例
この問題では、「技術の発達」「貿易」「流通」の3つの観点に基づいて資料を整理し、それぞれの関連性を考慮して200~250字で論述する必要があります。ポイントは以下の通りです。
- 技術の発達:資料Aに基づき、水車など新しい技術による農業の発展を説明。
- 貿易:資料Bに基づき、海上輸送を活用した貿易の拡大を説明。
- 流通:資料Cに基づき、市場の発展を説明。
解答例
鎌倉時代から室町時代にかけて、資料Aに示される水車の使用など新しい技術の登場は農業技術の向上を示し、生産性を大きく向上させました。資料Bにある兵庫への海上輸送の記録は、遠隔地間の物品流通の活性化を示しています。さらに、資料Cから読み取れる市場の整備は経済を活性化し、資料B・Cから読み取れるように貨幣経済が浸透しました。これらにより、資料Dからわかるように人々の暮らしが豊かになりました。技術革新による生産量増加や効率的な流通、そして貨幣経済の浸透によって産業や経済が大きく発展しました。
(244文字)
問題2の概要
問題の主題は「台風の接近数とその違いの理由」です。
問題2では、与えられた表、図1(統計データ)、図2(天気図)を参照し、以下の2つの問に答えることが求められています。
問1
沖縄・奄美地方と関東甲信地方の月別台風接近数のデータを比較し、それぞれの地域でどのような特徴があるのかを述べる必要があります。
問2
月別台風接近数の違いが生じる地理的・気象学的な要因を、図1と図2から読み取り、論理的に説明する必要があります。
出題意図
この問題では、与えられたデータや図を正確に読み取る力と、それをもとに地域間の違いの理由を論理的に説明する力が試されています。
特に、気象データを扱うことで、自然現象の仕組みを科学的に考察する力を養うことが目的です。
表、図1、図2の概要と解説
表の概要と解説
概要
表では沖縄・奄美と関東甲信地方の月別台風接近数が示されています。
①沖縄・奄美
- 6月~10月が台風接近のピークです。
- 特に7月から9月は接近数が多く、最盛期は8月。
- 沖縄・奄美地方は台風の発生ポイントに近いため、比較的早い段階から台風の影響を受けやすい地域です。
②関東甲信地方
- 8月~10月が台風接近のピーク。
- 最盛期は10月で、9月も接近数が多い。
- 6月~7月は接近数が少ない。
解説
沖縄・奄美地方は、台風が発生する南西諸島や南シナ海からの距離が近いため、台風が強い勢力を保ったまま接近しやすいです。
また、台風が沖縄・奄美地方を横切るケースが多く、接近数が多くなる傾向にあります。
台風が日本本土に接近するには太平洋高気圧の位置が関係しています。
夏の盛りには高気圧が強いため、台風は日本列島を避けるように進むことが多いです。
秋になると高気圧が弱まり、台風が偏西風に乗って日本本土へ進むルートが増えるため、関東甲信地方での接近数が増加します。
図1の概要と解説
概要
ある夏の日の天気図を、4日連続で掲載しています。
沖縄・奄美に接近した台風が、北西に進路を変えています。
解説
ここで、夏の天気図の特徴である太平洋高気圧に注目しましょう。
すると、夏は太平洋高気圧の存在が関東甲信地方への台風接近を防いでいるのではないかと考えることができます。
図2の概要と解説
概要
ある秋の日の天気図を、4日連続で掲載しています。
沖縄・奄美に接近した台風が、北西に進路を変更することなく関東甲信地方に接近しています。
解説
夏との比較をして、太平洋高気圧がないことが秋に関東甲信地方への台風接近が多くなる要因であることがわかります。
問1の解説と解答例
解説
問1では、沖縄・奄美と関東甲信地方の台風接近数の月別違いについて説明する必要があります。
ポイントは、接近数のデータから地域ごとの違いを具体的に説明し、それぞれの特徴を明確に述べることです。
また、合計の違いにも言及しておきたいです。
解答例
沖縄・奄美地方は台風の発生源に近いため、年間に接近する台風の数も関東甲信地方の2倍以上となっているのが特徴であり、特に6月から10月に集中している。一方で関東甲信地方では、台風が進路を北寄りに変える時期である8月~10月に接近数が多くなる。
問2の解説と解答例
解説
図1と図2の天気図の違いに注目しましょう。
図1は夏、図2は秋の天気図です。
中2理科で、それぞれの季節の天気図について特徴を学んだと思います。
夏の天気図の特徴は覚えていますか?
そう、太平洋高気圧の存在です。
図1の8月27日・8月28日の天気図をよく見てみると、8月28日に太平洋高気圧が登場して台風の進路を北西に変更させていることがわかります。
一方、図2の天気図では、いずれの日付のものにも太平洋高気圧が登場していません。
進路を北西に変更させる要因がないので、台風が関東甲信地方に上陸しています。
また、そもそも台風が南で発生するため南にある沖縄・奄美に接近しやすいという話にも言及しておきましょう。
解答例
沖縄・奄美地方は、台風が発生する南西諸島や南シナ海からの距離が近いため、台風が接近しやすい。夏は太平洋高気圧が台風の進路を北西に変更させることが多いため沖縄・奄美に接近した台風が関東甲信地方にも接近するケースが少ないが、秋は太平洋高気圧がないため台風の進路を北西に変更させる要因が弱く、関東甲信地方に台風が接近するケースが多くなるから。
まとめ
今回の小論文では、台風接近数の地域差とその理由を考察する内容が問われました。
沖縄・奄美と関東甲信地方の接近数の違いは、地理的要因と気象的要因から説明できます。
この問題を通じて、データや図表を基にした論理的な考察の重要性を学ぶことができました。
小論文では、具体的なデータを活用しながら簡潔かつ的確に説明する力を身につけることが重要です。
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