今回は、2024年2月(令和6年2月)に行われた都立高校入試・社会の解説をします。
都立自校作成校を受験する皆さんにとって、共通問題である社会は90点が求められるシビアな試験です。
しかしながら、都立高校入試の社会は基礎知識の暗記だけで安定して90点台がとれる試験ではありません。
この記事では、解説をしながら都立高校入試・社会の攻略法をお伝えしていきます。
なお、姉妹塾である日比谷高校受験専門塾・星進会のページで社会共通問題の全体像や分野別の重要な情報を説明しています。
こちらをご覧になってから以下の解説記事をご覧になっていただくとより理解が深まると思います。
大問1
大問1では、地理・歴史・公民から1題ずつ出題されます。
問1
大問1の地理は地図や地形図を読み取る問題が多く、この年もそうでした。
なお、この問題はこの年の「間違えてもしょうがない枠」だと考えています。
※「間違えてもしょうがない枠」とは
「間違えてもしょうがない枠」とは、都立自校作成校を受験する皆さんが持っておくべき知識・読み取り力で正解するのが厳しいかなと思う問題の分類です。
都立自校作成校に合格するには社会で90点くらいをとる必要があります。言い換えれば、満点が必須ということではありません。
したがってこの枠が存在することになります。各回に0~2問あります。
この枠に入っている問題の対策は、時間をかけ過ぎないことをお勧めします。
皆さんには、学校で授業態度・提出物・小テスト・定期試験・自校作成問題の対策・理科の対策とやることがいっぱいあります。
推薦入試を受ける場合は英検・小論文・面接対策など他にもやることがあります。
なお、言うまでもないことですが正解できないよりは正解できたほうが良いです。
可能であれば正解を目指しましょう。
ア・イ
この2つの選択肢はとても似ています。
・共通点
どちらも道路と鉄道が立体交差している
・相違点
アは鉄道の線路の上に橋+道路、イは道路の上に橋+線路がある
この相違点に着目し、どちらがBでどちらがEなのかを決める必要があります。
どうやって判断すればよいでしょうか。
ヒントは、Bの南西にある利根川です。
利根川があるので川を渡るために橋がかけられていて、その上に線路が通っています。
「橋+線路」です。
そう、イと同じです。
したがってイはBと考えます。
残ったアがEです。
ウ
「丁字形の交差点」がヒントです。
残っているCとDのうち、Cは直線状の道路となっています。
よって、ウはDです。
残ったエ
消去法によりCとなります。
なお、ヒントになりそうな「旧取手宿本陣表門」は地図への記載がありません。
過去、固有名詞の地図への記載が決め手になる問題が多かったので過去問演習をたくさんやった人ほど戸惑ったのではないかと思います。
問2
大問1の歴史は人物などの固有名詞についての基礎知識が問われます。
日本地図を使い、人物や出来事の場所を問う問題が出題されることが多いですがこの年は違いました。
今回は「戦国大名が」とあるので戦国時代の決まりの名称を選ぶ問題となります。
分国法です。
なお、
ア:御成敗式目⇒鎌倉時代
イ:大宝律令⇒飛鳥時代(律令制が奈良時代なので奈良時代としても良い)
ウ:武家諸法度⇒江戸時代
となっています。
このように、都立高校入試の歴史は「時代区分」が非常に重要な視点となっています。
先ほども紹介した
で都立高校入試・社会の歴史を攻略するための時代区分を紹介していますので是非ご覧ください。
問3
大問1の公民は歴史と同じく基礎知識が問われます。
用語の意味をちゃんと理解しているかどうかを問われることがほとんどです。
今回は国会の種類に関する問題でした。
「衆議院議員の総選挙後に召集」とあるので特別会ですね。
大問2
大問2は世界地理の問題です。
世界の国・地域に関する気候などの特徴に関する知識が問われます。
問1
国ごとの気候の特徴に関する問題です。
今回のCやDのように、具体的な国名が分からなくても「アフリカにある」「ヨーロッパにある」という判断基準で突破できることも多いです。
(もちろんこうした国の場所と名前が一致するのであればそのほうが良いですが。)
なお、Aはタイ、Bはサウジアラビアです。これは知っておくべきです。
Ⅰの文章
ヒントとその活用法を記します。
・「首都は標高2350m」⇒高地になるので緯度の割りに気温が低くなる
・「各月の平均気温の変化が小さい」⇒緯度が小さい(=赤道に近い)
・「コーヒー豆」「輸出額に占める割合が高い」⇒商品作物であるためプランテーションがあった場所(=熱帯・亜熱帯地域)
赤道に近い⇒Dではない
石油がメインの輸出品ではない⇒B(サウジアラビア)ではない
緯度の割りに気温が低い⇒高温多湿なA(タイ)ではない
よってCになります。
ア
気温の年間変化が大きい⇒×
イ
気温の年間変化が小さい⇒〇
年平均気温がエと比べて低い⇒〇
ウ
気温の年間変化が大きい⇒×
エ
気温の年間変化が小さい⇒〇
年平均気温がイと比べて高い⇒×
以上から、Cとイが正解です。
問2
国ごとの農業の特徴に関する問題です。
問1と同様に、Q⇒オセアニアにある島くらいの認識でOKな選択肢もあります。
なお、Pはメキシコ、Rはバングラデシュ、Sはイタリアです。
バングラデシュは知名度が低いですがインドの隣国であることや人口が多いことから、同様の特徴をもつパキスタンと同様に割とよく都立高校入試社会の大問2で見かけます。
表から読み取るべき情報をまとめます。
なお、難易度が低い(国を特定できる情報が豊富である)と思う順に紹介します。
イ
・柑橘類・オリーブ⇒地中海式農業
・小麦⇒パスタ
以上からS・イタリアと判断。
エ
・米⇒アジア
・3品目の合計生産量が多い⇒人口が多い⇒PかR
以上からR・バングラデシュと判断。
ア
・とうもろこし
・牛
・3品目の合計生産量が多い⇒人口が多い⇒PかR
以上からP・メキシコと判断。
ウ
消去法でQ。
(3品目の合計生産量が極めて少ない⇒人口が少ない⇒小さい島であるQという判断もできる)
問3
3つの資料から情報を読み取って正解を選びます。
ヒント①Ⅲの文章
・ポルダー⇒Z(オランダ)
ヒント②
・日本の輸入額は2倍に届いてはいないが増加⇒資料Ⅰから、イではないことがわかる。
ヒント③
・輸出額は3倍以上⇒資料Ⅱから、エではないことがわかる。
ヒント④
上位3位までの貿易相手国は全て同じ地域の政治・経済統合体の加盟国⇒Z(オランダ)の貿易相手国⇒すべてEU加盟国⇒アが正解
以上より、Z・アが正解。
大問3
大問3は日本地理の問題です。
各都道府県の特徴に関する知識を活用して解いていきましょう。
問1
判断しやすい順に解説します。
エ
・火山灰の大地+台地⇒シラス台地
・肉牛
以上から、D(鹿児島県)と判断できる。
イ
・北側に3000m級の山々が連なる山脈⇒日本アルプスが近い
・茶
以上から、B(静岡県)と判断できる。
ウ
・夏に吹く北東の冷涼な風による冷害⇒東北地方太平洋側
・その影響を受けにくいとの言及アリ⇒東北地方と考えられる
・稲作が盛ん⇒秋田県は稲作が3位
以上から、A(秋田県)と判断できる。
ア
消去法でC。
問2
ヒント①Ⅱの文章
・国内最大規模の石油コンビナート⇒化学工業が盛ん
・他の都道府県への従業・通学者の割合が1割以上⇒東京・大阪・愛知の隣にある⇒XとZが消える(Xの愛知は名古屋大都市圏の中心、Zの広島は中国地方の地方中枢都市のある県。)
・北西部に人口が集中⇒西側に大都市圏がある⇒千葉の西に東京、兵庫の東に大阪⇒Wの千葉県と判断できる。
ヒント②製造品出荷額
・最多のエが愛知県
ヒント③上位3位の品目
・1位に「石油・石炭製品」⇒アが正解となる。
ヒント④他の都道府県への従業・通学者数
・圧倒的に多い⇒東京へ通勤・通学する人が多い千葉県がア。
以上から、ア・Wが正解。
問3
都立高校入試・社会の記述問題は設問要求をしっかりと読みましょう。
それさえできれば、何を書けばいいかわかります。
・現状と将来を比較する
・自宅からの移動方法に着目する
ヒント①
「公共交通のサービス水準が不十分」⇔「公共交通のサービス水準が向上」
ヒント②
「徒歩圏に日常生活に必要な機能がそろっていない」⇔「そろっている」
ヒント③
「自動車を利用しないと生活しづらい」⇔(「自動車を利用しなくても生活しやすい」)
以上のヒントから、将来の富山市における日常生活に必要な機能の利用は
公共交通のサービス水準を向上させるとともに駅やバス停から徒歩圏内に日常生活に必要な機能をそろえて自動車を利用しなくても生活しやすいまちづくりを実現する。
とまとめることができます。
大問4
大問4は歴史の問題です。
大問1の歴史の解説でも言いましたが、時代区分と時代ごとの重要な出来事を把握しておくことが求められます。
なお、時代区分に関する言及がたくさん登場しますが、それについて確認したい方は
をご覧ください。
問1
ア
・「唐へ派遣」=遣唐使
・最澄
⇒平安時代(貴族)
イ
・執権
・禅宗
⇒鎌倉時代
ウ
・明
・勘合
⇒室町時代
エ
・隋
・大化の改新
⇒飛鳥時代
以上から、古い順に並べると
エ⇒ア⇒イ⇒ウとなります。
問2
設問要求は
・輸送経路に着目する
・寄港地の役割に着目する
の2つです。
ヒント①Ⅱの地図
・太平洋側を南下して江戸に年貢米を輸送する経路がある
・日本海側から瀬戸内海を経て太平洋側を北上して年貢米を輸送する経路がある
ヒント②Ⅰの文章
・寄港地では船の発着の日時や積荷の点検などを行う
以上から、
幕府の領地から江戸に年貢米を輸送する経路として、太平洋側を南下する経路と日本海側から瀬戸内海を経て太平洋側を北上する経路が提案された。また、寄港地では船の発着の日時や積荷の点検などを行うことが提案された。
などとなります。字数の制限がないので、読める範囲の字の大きさでたくさん書いてしまいましょう。
問3
ア
・治外法権の撤廃⇒日清・日露戦争期⇒C
イ
・関東大震災⇒大正⇒D
ウ
・日米和親条約⇒幕末⇒A
エ
・西南戦争⇒明治維新期⇒B
問4
ア
・サンフランシスコ講和条約⇒戦後復興期⇒A
イ
海上貿易量(輸出)が4倍・海上貿易量(輸入)が6倍に増加⇒B
ウ
・冷戦が終結⇒D
エ
・石油価格の急激な上昇=オイルショック⇒C
大問5
問1
人権に関する日本国憲法の条文を扱う問題です。
今回は「平等権」のものを選びます。
ア
生存権⇒社会権
イ
「平等」⇒平等権
ウ
「供述を強要されない」⇒黙秘権
エ
「裁判を受ける権利」⇒請求権
「平等権」を選ぶ問題で、選択肢に「平等」と書いてあるのがイだけということで、とても簡単なサービス問題になっています。
問2
日本国の歳出に関する問題です。
Ⅱの文章
・間接税
・1989年に導入
・段階的に税率が上がった
⇒消費税のこと
ア
・借金⇒公債金
イ
・給料に課される
・収入に応じて変化
⇒所得税
ウ
・商品の販売やサービスの提供に課される
⇒消費税
エ
・法人の~⇒法人税
問3
Ⅰの文章
・「持続可能」⇒環境・開発サミット以降(2002年以降)
・17の目標⇒SDGs⇒2015年以降
以上から、エと判断。
問4
この問題の設問要求は
・主な改正点に着目する
ことです。
それを意識して、国の若年者に対する期待について書きましょう。
ヒント①Ⅰの文章
・成年年齢を18歳に引き下げる
・社会への参加時期を早める
・若年者が将来の国づくりの中心であると示す
ヒント②Ⅱの文章
・投票権年齢・選挙権年齢を満18歳以上とする
・成年年齢を満18歳以上とする⇒進学や就職などの進路を自分の意志で決めることができるようにする
以上から、
国は、成年年齢、投票権年齢、選挙権年齢を満18歳以上とすることで社会への参加時期を早め、若年者が将来の国づくりの中心となるとともに進学や就職などの進路を自分の意志で決めることを期待している。
などとなります。
大問6
問1
ア
・1789年に市民革命
・ルーブル美術館
⇒フランス
ウ
・1902年に日本と同盟
・シェイクスピア
⇒イギリス
エ
・ギニア湾岸
⇒アフリカ⇒D
イ
消去法
(森鴎外の留学先がドイツであることは国語の授業で学んでいるはずなのでそれを覚えていれば消去法でなくても解けます)
問2
Ⅱの文章
・「アメリカ合衆国に本社がある証券会社の経営破綻などを契機に発生した世界金融危機」⇒2008年のリーマンショック⇒ウ
問3
ヒント①Ⅱの文章
・民族の分布を考慮しない直線的な境界線
・1960年に多くの国が独立
⇒アフリカ
ヒント②Ⅱの文章とⅠのグラフの組み合わせ
・Ⅱの文章:50か国を超える国が加盟
⇒Ⅰのグラフのア
以上が2024年2月(令和6年2月)に行われた都立高校入試・社会の解説です。
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