こんにちは!都立自校作成校受験対策専門塾・誠学会の諏訪孝明です。
この記事では、2023年2月に行われた都立青山高校の自校作成問題の国語の大問3物語文(小説)・大問4説明文(評論文)・大問5鑑賞文(古典を題材にした説明文)の問題を解説します。
自校作成校受験生のうち、
・国語で安定して高得点をとるための読み方・解き方を知りたい
・物語文が苦手
・難解なテーマの文章を読解するのが苦手
・都立高校入試に独特の形式である鑑賞文に苦戦している
・過去問演習の後、自分の読み方・解き方や理解・解釈が合っているのかどうかを確認したい
といった方におススメです。
なお、今回の解説をより理解するために国語を解くときに気を付けてほしいことをこちらにまとめております。
今回の解説に先んじて読んでおいていただくと理解が深まります。
是非読んでみてください。
また、一度自力で本文を読み設問を解いてから読むことを強くお勧めします。
では、解説をはじめます。
目次
- 1 大問3本文
- 1.1 ラッキー/うれしそう
- 1.2 傷ついた
- 1.3 めげなかった
- 1.4 こうして今ここにいる
- 1.5 愉快そう
- 1.6 深呼吸をひとつして
- 1.7 断る
- 1.8 薄暗い道
- 1.9 さっきまでとは一変して
- 1.10 おれのことは気にしないで/おれがそうしたい
- 1.11 楽しい
- 1.12 まだ一人前の職人とはいえない/未熟なふたり
- 1.13 やってみたい/~すればいい/~しよう
- 1.14 反対に
- 1.15 いつかは虹に座れる/晴れやかな気持ちで世界を見渡せる
- 1.16 身じろぎもせずに/まじまじと/目をそらさなかった/そらすつもりはなかった
- 1.17 小学生みたいに
- 1.18 魚は一匹も釣れない
- 1.19 おかしいなあ/ぶつくさ/恨めしげ
- 1.20 反撃
- 1.21 甘えない、頼らない、投げ出さない
- 1.22 あせらない、考えすぎない、他人のせいにしない
- 1.23 拍子抜け
- 1.24 驚いてくれた
- 1.25 今度は徳井が黙る番
- 1.26 安請け合い/妄想⇔目標は高く/夢
- 1.27 それぞれの三か条を守りきれているとはいえない
- 1.28 ただし
- 1.29 うまくいかない
- 1.30 うらやましげ
- 1.31 魚住が腰を上げた⇔徳井は反対(やめとけよ)
- 1.32 ふたつ仲よく
- 2 大問3設問
- 3 大問4文章1
- 4 大問4文章2
- 5 大問4設問
- 6 大問5本文
- 7 大問5設問
- 8 都立青山高校に合格するなら自校作成専門対策塾 誠学会
大問3本文
今回は前文がありません。
つまり、主要な登場人物がどんな名前・年齢・職業・境遇なのかをすべて文章から読み取る必要があります。
手探り状態で読み進めることになりますので、いつも以上に考えながら読む必要があります。
ラッキー/うれしそう
魚住の描写。
虹が出たことがきっかけ。
虹の上に座ってみたかった⇒「また夢みたいなこと」(メルヘンチックな内容)⇒「魚住らしい」
ということは、魚住は子どもっぽい性格と思われる。
傷ついた
「虹の上に座ってみたい」と言った魚住に対し、父が馬鹿にしたことに対しての魚住の反応です。
繊細な性格なのかもしれません。
めげなかった
引き続き魚住の反応です。
傷つきはしたが、めげなかったとのこと。
魚住にはある程度の強さがあるようです。
こうして今ここにいる
前文がないせいで、この時点では魚住が何者で、どんな状況におかれているか不明です。
したがって、これから「ここ」とはどこを指すのかを考える必要があるのだなと考える必要があります。
愉快そう
魚住の実際の状況ではなく、徳井の妄想の中の魚住ですが魚住の描写であることに変わりありません。
やはり、魚住は子どもっぽく無邪気な性格のようです。
深呼吸をひとつして
リラックスしようとしている⇒緊張している
という状況を指すことが多いです。
徳井は緊張しているようです。
断る
何を断るのか、この時点で不明です。
分からない状態で読み進める必要があります。
状況が分からなくても、魚住・徳井の心情を追いかけられればそれでよいという割り切りが必要です。
薄暗い道
先ほどまで「雨上がりの虹」という描写=明るい描写でしたが、一転して暗い描写になりました。
深刻な話が始まるようです。
さっきまでとは一変して
同じく、一転して深刻な話が始まることを示しています。
声も表情もこわばっているという描写からもそれが伝わってきます。
おれのことは気にしないで/おれがそうしたい
魚住:徳井は自分のことを気にして断ろうとしている
徳井:自分がそうしたいから断ろうとしている
楽しい
徳井は魚住と一緒に椅子づくりをしていることを楽しんでいるとのことです。
2人の職業がかなり具体的になりました。
まだ一人前の職人とはいえない/未熟なふたり
2人の職業がさらに具体的になりました。
見習いの椅子職人のようです。
やってみたい/~すればいい/~しよう
2人の前向きな様子が伝わってきます。
反対に
2人が正反対の性格で、それぞれ全然違う課題を抱えていることがわかります。
こうした「対比」を表す表現は絶対に見逃してはなりません。
きちんと整理してから先に進みましょう。
設問に関わる可能性が高いからです。
魚住
・細かい加工が苦手⇒徳井が辛抱強く教える必要あり
・計画通りに作業を進めるのが得意ではなさそう⇒工程管理を徹底する必要あり
・顧客の開拓や接客が得意⇒徳井はこれを魚住から学ぶ必要がある
徳井
・顧客の開拓や接客が(魚住と比べて)苦手
魚住は子どもっぽい性格が描写されていますが、それを活かして他人とのコミュニケーションが得意なようです。
いつかは虹に座れる/晴れやかな気持ちで世界を見渡せる
虹に座るのは魚住の子どもの頃の夢・あこがれです。
それができるということは、「いつかは一人前の職人になれる」「2人の目標が達成できる」という意味です。
ここまで読むと、「断る」が別の工房からの引き抜き・移籍の打診を断るという意味だと分かります。
身じろぎもせずに/まじまじと/目をそらさなかった/そらすつもりはなかった
2人の真剣な様子が伝わってくる描写です。
小学生みたいに
魚住の描写です。
やはり、子どもっぽい・無邪気な描写がなされています。
描写が一貫しているので、彼の人となりをつかみやすいですね。
それでいて、真剣な様子が描写されることもありますので職人を目指すにあたって「子どもっぽさ」つまり真剣でないということはなさそうです。
魚は一匹も釣れない
行間があいています。
ここで場面が切り替わります。
急に魚釣りの場面になっているので、「2人で魚釣りにでも行ったのかな」と思いながら読み進めることになります。
おかしいなあ/ぶつくさ/恨めしげ
魚住の反応です。
魚が釣れず、この反応です。
やはり子どもっぽいですね。
反撃
徳井が魚住にリアクションしています。
「反撃」という言葉を使ってはいますが、2人は仲良く釣りをしているようです。
なにより、仕事以外の時間も一緒にいるというのは仲が良い証ですね。
甘えない、頼らない、投げ出さない
魚住の誓い、約束です。
こういう約束をするということは、魚住には「他人に甘えてしまう」「他人に頼ってしまう」「投げ出してしまう」という欠点があるようです。
魚住には「細かい加工が苦手」「計画通りに作業を進めるのが得意ではない」という欠点があるので、それと組み合わせて考えましょう。
あせらない、考えすぎない、他人のせいにしない
こちらは徳井の誓いです。
徳井は「焦ってしまう」「考えすぎてしまう」「他人のせいにしてしまう」という欠点があるようです。
拍子抜け
進藤への断りの連絡に対する薄いリアクションに拍子抜けしたとのことです。
他の人間もリアクションが薄く、拍子抜けしたとのことです。
驚いてくれた
菜摘の反応です。
「~してくれた」はプラスの感情のときに使います。
徳井は、断ったことを周囲に驚いてほしかったようですね。
今度は徳井が黙る番
魚住の発言に対し、徳井が言い返せず黙りました。
ここまで魚住の子どもっぽさ、無邪気さの描写が目立ちますが魚住が徳井をやりこめることもあるようです。
安請け合い/妄想⇔目標は高く/夢
2人の正反対な価値観が描写されています。
魚住は子どもっぽい無邪気な性格ですから、徳井はその逆つまり内向的で現実的な性格をしていると考えられます。
それぞれの三か条を守りきれているとはいえない
魚住:難しい細工⇒弱音を吐く
徳井:注文の入らない日が続く⇒憂鬱になる
といったかたちで2人はそれぞれの欠点を克服できてはいないようです。
ただし
ここで流れが変わるようです。
前向きな流れに変わりそうですね。
魚住:これやって⇒これ教えて
他人に甘えず・頼らずに、教わって自分の力で細工を頑張っているようです。
徳井:じっくり確認
あせらずに確認することができるようになっているようです。
うまくいかない
押し問答になる、一蹴する、納期の直前に異様に忙しくなるなどまだまだ未熟な2人はうまくいかないことも多いようです。
うらやましげ
魚住の反応です。
おじいちゃんたちは釣れているのがうらやましいようです。
一方、2人は釣れていません。
対照的な釣果ですね。
2人はうまくいかないことも多いようで、釣りにそれが表れているようですね。
魚住が腰を上げた⇔徳井は反対(やめとけよ)
魚住はおじいちゃんたちに声をかけにいきました。
子どもっぽい、無邪気な魚住らしい行動ですね。
徳井はそれに反対します。
これも、魚住とは正反対の特性をもつ徳井らしい対応ですね。徳井が顧客の開拓や接客(つまりは他人とのコミュニケーション)が苦手であることが改めて伝わってきます。
ふたつ仲よく
正反対な2人ですが、これからも協力して一人前の職人を目指していくようです。
大問3設問
問1
魚住の人柄についての問題です。
本文の描写で、再三「子どもっぽい」「明るく前向き」といったものがありました。
それをもとに考えましょう。
なお、傍線部1前後の描写のみで考えてはだめです。本文全体から考えましょう。
ア
「楽観的」「無邪気」⇒〇
イ
「具体的な努力をしない」⇒努力をしている描写がありました⇒×
ウ
「無責任な人」⇒細工を頑張る等、努力をしています⇒×
エ
「甘さを指摘されても意に介さず」⇒欠点を克服しようと頑張っています⇒×
問2
これも傍線部前後だけでは解けないようになっています。
最後まで読めば、「引き抜きを断ることを伝える」直前の緊張感が伝わってきます。
ア
「幻想的」(虹)⇔「現実的」(椅子づくり)
これからする話は椅子づくりの話ではありません。引き抜きを断る話です。×。
イ
「楽しいからだと改めて告げるのは」⇒断る話がメインです⇒×
ウ
「どこにも行かず」⇒引き抜きを断ることへの言及があります⇒〇
エ
「魚住に否定されるのではないか」⇒そう思っていることを示す描写はありません⇒×
問3
「小学生みたいに」⇒魚住が無邪気に喜んでいる様子が伝わります。
徳井がこれからも一緒に椅子づくりをしてくれることが嬉しいのでしょう。
ア
「全くの予想外」⇒これだと、魚住が徳井のことをまったく信じていなかったことになり違和感があります。
他にもっと〇に相応しい選択肢があればそちらを選んだほうがよさそうです。
イ
「自分自身が情けなく投げやり」⇒喜びとは全然違う感情です⇒×
ウ
「うれしさを隠しきれない」⇒〇
エ
「いらだち」⇒喜びとは全然違う感情です⇒×
問4
誓いを立てた後の魚住の様子ですが、誓いの内容について
魚住は
・細かい加工が苦手⇒徳井が辛抱強く教える必要あり
・計画通りに作業を進めるのが得意ではなさそう⇒工程管理を徹底する必要あり
という状況であり、その後
これやって⇒これ教えて
からわかるとおり、他人に甘えず・頼らずに、教わって自分の力で加工を頑張っているようです。
これを書きましょう。
例
細かい加工を徳井に頼りっきりにせず教わって自分でもやる(27字)
といった文になります。
問5
「ふたつ仲よく」⇒正反対な2人ですが、これからも協力して一人前の職人を目指していくことが示されています。
ア
「安定していないものであることを強調」⇒「仲よく」が無視されている⇒×
イ
「他は釣れている」⇔「まだ何も釣れていない」 この対比はあった
「希望」⇒前向きな表現⇒×とは言えない
他に良い選択肢がなければこれが正解
ウ
「いさかいが絶えない」⇒「波」には「波乱」などの意味もあるので、その可能性もあるが「かすかな」波なのでこれは言い過ぎと考えられる⇒×
エ
「二人が独立していく」⇒×
大問4文章1
今回は、文章が2つ与えられています。
文章1を読んでいる段階では文章1と文章2とのつながりを意識することはできませんので、普段通り読めば大丈夫です。
第1段落
・「AにはBが不可欠」:Aを実現するにはBが絶対に必要だということです。つまり、強調の表現であり重要であることが分かります。ここでは、「深い思考の実現には経験が絶対に必要である」と書かれています。
・「経験の重要性」:「重要」という言葉が使われているので、「経験」はこの文章において重要なことば=キーワードです。
段落の要旨:深い思考には経験が必要であるため、経験は重要だ。
第2段落
・「タブラ・ラサ」:第1段落・第2段落に登場しています。段落をまたいで登場する語句は重要です。ここでは、「タブラ・ラサ」が「経験主義」と結びつけられていますので、第1段落に続いて第2段落も(そしておそらくこの文章ではずっと)「経験」がキーワードであると判断できます。
・「経験主義」⇔「合理論」:それぞれ「人間は最初は白紙」⇔「もともと生まれ持った観念が存在する」という正反対の立場をとっていますので、対比構造をとっています。この文章は「経験」がキーワードですので、筆者は「経験主義」の方を支持すると予想できます。
・「的を射ている」:これは筆者がプラスの評価をしていることを意味します。ここでは、「経験主義」にプラスの評価をしています。
・「~ではないでしょうか」:これは筆者の主張があることを示す文末です。ここでは、経験主義の正しさを主張しています。
・「~から」:因果関係を示します。ここでは、「誰しも経験によって強く賢くなる」⇒「経験主義が正しいといえる」です。
段落の要旨:「経験主義」という考え方があるとおり、人は経験によって成長していく。
第3段落
・「つまり」:「つまり」の直後には要点がくることが多いです。ここでは、「AIに負けない思考のために経験値を上げる必要がある」と述べられています。
・「ところが」:対比構造をつくります。ここでは、「AI」(経験は不要)⇔「人間」(経験が必要)という対比になっています。
なお、「人間がAIに負けないようにするにはどうすればいいか」は最近の評論文の出題テーマのトレンドです。
段落の要旨:人間がAIに負けない思考をするには経験が必要だ。
第4段落
・「かなわない」:物事を比較し、優劣をつける際に用いる表現です。対比構造を示しています。ここでは、引き続きAIと人間の対比です。
・「しか」:否定語です。ここでは、AIを否定しています。
・必要な情報(AIが得ようとする情報)⇔関連する情報(AIがあまり得ようとはしない=非常に形式的なものにとどまる)
段落の要旨:AIは必要な情報しか得ようとしない。
第5段落
・「これに対して」:対比構造を示します。AIと人間の対比です。前段落が「AIが得ようとするのは必要な情報のみだ」という話だったので、その逆つまり「人間は不必要な情報も得ることができる」となることが予想されます。
段落の要旨:人間は必要な情報だけではなく、関連する不必要な情報を得ることができる。
第6段落
・「特徴・強み」:ここでは、AIと比べた人間の経験の特徴・強みが示されています。そしてそれは「ここ」と指示語で示されているので、第5段落で示された内容です。
段落の要旨:人間の経験は目的に関連しない情報も得ることができる。
第7段落
・「さらに」:要素を追加する際に用いる語句です。ここまで、AIにはない人間の経験の特徴・強みが述べられていたわけですから、それが追加されることが分かります。
段落の要旨:人間の経験には、バイアスがかかるつまり事実をそのまま受け取らす時間が経てば意味を変えるという特徴もある。
第8段落
・「だから」:因果関係を示す言葉です。ここでは、「経験は主観的なもの」⇒「人によって意味が異なる」です。
段落の要旨:経験とは主観的なものであり、人によってその意味は異なる。
第9段落
・「違い」:対比構造を示す語句です。ここでも継続して、AIと人間の対比です。
段落の要旨:経験の意味が人によって、そして同じ人でも時間が経てば変わるのは人間の特徴である。
第10段落
・「AIにはそのようなことはありえない」:AIと人間の対比が続いています。
段落の要旨:人間の経験の意味は刻一刻と変わる。AIにはそのようなことはない。
第11段落
・「まったく質が異なる」:対比構造を示します。「AIが取得する情報」と「人間にとっての経験」の対比です。
・「だから」:因果関係を示します。「経験を基に思考や創造を行う」⇒「人間の思考はユニーク」
・「~であればあるほど…」:変化を起こす条件を表しています。ここでは、「経験が多く、強烈であれば思考がユニークになる」ということです。
・「理由」:因果関係を示します。「経験が多く、強烈であれば思考がユニークになる」⇒「哲学をするには経験値を上げる必要がある」
段落の要旨:AIが取得する情報と人間にとっての経験はまったく異なる。人間は経験を基に思考や創造を行うため、人間の思考は経験が多く強烈であるほどユニークとなる。よって、哲学にも経験が必要となる。
第12段落
・「~しかありません」:限定する表現なので、重要です。ここでは、「人間は思考力でAIに負けないようにするしかない」
・「~べきでしょう」:筆者の主張があることを示す文末です。ここでは、「人間は感情を生かした形での思考力を武器にすべき」です。
段落の要旨:人間がAIに負けないようにするには、感情を生かした形での思考力で勝負するべきである。
第13段落
・「~べきではありません」「~すればいい」:筆者の主張があることを示す文末です。
段落の要旨:人間は思考力で勝負するべきだ。
第14段落
・「ところが」:逆接は対比を示します。ここでは、「人間は弱い」⇔「人間の思考力は強い」
段落の要旨:人間の思考力は強い。
第15段落
・「なぜなら」:因果関係を示します。「人間には感情がありセンシティブであるが、それを生かせばいい」⇒「そうすればAIに負けない」
段落の要旨:人間には感情がありセンシティブであるが、それを生かせばいい
第16段落
・「一言で言うと」:それまで述べてきたことを短い言葉でまとめてくれる際に使う表現です。まとめなので、重要です。
・「~があってはじめて」:条件と結果の関係を表します。「合理的思考と感情のふたつがある」⇒「強靭な思考ができる」
段落の要旨:人間は感情がありセンシティブあるということを武器にできる。感情と合理的思考の2つを駆使して強靭な思考を行う。
第17段落
・「~があってはじめて」:条件と結果の関係を表します。弱さ=感情、強さ=合理的思考です。
・「~しない限り」:条件と結果の関係を表します。「AIが真の弱さを理解する」⇒「AIが人間の求めるものを提供する」
段落の要旨:思考力を武器にするには、弱さと強さの両方が必要。AIが人間の求めるものを提供するには、弱さを理解する必要がある。
大問4文章2
文章1と関連のある文章であると考えられるので、「AIと人間の対比」や「経験」「感情」などの文章1の骨子が再登場する可能性が高いです。
第1段落
・「もちろん+逆接+主張」:この形は覚えておくと非常に便利なので覚えておきましょう。
・「よって」:因果関係を示します。ここでは、「テキストによる発話の多くはその感情の推測が難しい」⇒「音声など、テキスト以外を用いた感情理解の研究が行われている」
段落の要旨:テキストによる発話の多くは感情の推測が難しいため、音声などを用いた感情理解の研究が盛んにおこなわれている。
第2段落
・「問題」:評論文における「問題」は様々な意味があります。問い、課題、欠点、テーマといった意味になります。ここでは課題だと考えます。
・「よって」:因果関係を示します。「人は感情をそんなに表出しない」⇒「データセットにするのは大変」
段落の要旨:(感情理解の研究を行うための)データを集めるのは難しい。
第3段落
・「ところで」:話題を変えるときに使います。感情理解のコールセンターでの活用に話題が変わりました。
・「つまり」:直後に要点がくる表現です。ここでは「お客様が怒っている通話を見つけること」です。
段落の要旨:感情理解はコールセンターにおいても、お客様が怒っている通話を見つけることに使われている。
第4段落
・「目的」:この言葉は理想の状態を表すので重要です。ここでは、「共感」が理想の状態であり重要であることが分かります。
・「~なくして~なし」:条件と結果の関係を表します。ここでは、「共感」⇒「信頼」です。
・「非常に重要」:文字通り非常に重要です。ここでは、「共感」が非常に重要だとされています。
・「~ではないでしょうか」:筆者の主張があることを示す文末です。ここでは、「会話において共感は非常に多い」という主張です。
段落の要旨:会話内では共感が非常に多く、信頼に必要なため重要である。感情理解の目的は共感である。
第5段落
・「影響」:「AがBに影響を与える」は、変化をもたらすので重要です。ここでは「共感が雑談AIに与える変化」ということになります。
段落の要旨:共感が雑談AIに与える影響を調査している。
第6段落
・「~のほうが…」:対比構造を示す表現です。ここでは「共感するシステム」(満足度が高い)⇔「共感しないシステム」(満足度が低い)です。
・「面白い」:筆者の主観=意見=主張です。
・「つまり」直後に要点がきます。
⇒システムが共感すればするほどユーザーも共感する
・「極めて重要」:文字通り極めて重要です。ここでは「共感するとユーザーの共感(相手を気にかけ、相手がどう思っているのかを考えるという行動)を引き出すことができるので信頼関係の構築に極めて重要である」ということです。
段落の要旨:共感はユーザーの共感を引き出すことができ、信頼関係の構築に極めて重要である。
第7段落
・「AだけでなくB」:Bが重要です。ここでは、経験に裏打ちされた共感の重要性を示しています。
段落の要旨:経験に裏打ちされた共感が重要である。
第8段落
・「本当に~のか」:問いかけはテーマを示します。最終段落で新しいテーマが示されており、それは「ロボットや対話システムに共感ができるのか」というものです。
・「~とは言えない」「でしょう」:筆者の主張があることを示す文末です。ここでは、「現在の雑談AIには真の意味である共感はできていない」としています。
段落の要旨:現時点では、AIには共感はできていない。
大問4設問
問1
「AIの情報」⇔「人間の経験」の対比構造に注意して本文を読めているかどうかを問う問題です。
人間の経験には、
・無関係なものも含まれる(AIの情報は必要な情報のみ)
・人によって意味が異なる
・時間が経つと意味が変わる
という特徴があります。これを述べている選択肢を選びましょう。
ア
・「常に最新」⇒×
イ
・「過去をさかのぼりながら」「異なる複数のものを」⇒×
ウ
・「遠い近い」「回数」「年齢」⇒×
エ
・「条件に当てはまるものだけ」「個別的」「時間の経過とともに意味が変化」⇒〇
問2
人間の弱さ=感情がありセンシティブであること。
これにより思考を深めることができるとされている。
ア
・「繊細な感情」「AIに対抗できる思考」⇒〇
イ
・「繊細さに欠ける」⇒×
ウ
・「取るに足らないことで」⇒×
エ
・「真に幸せになる生き方を提案できる」⇒×
問3
意図についての問題です。
文章は、主旨と主旨の説得力を増すための説明で成り立っています。
傍線部3は文章全体の主旨ではありません。
この文章全体の主旨は「会話では共感が重要だが、今のAIには真の共感はできていない」というものになります。
よって、この主旨の説得力を増すためというのが意図になります。
ア
・「人と自然な会話ができる」⇒×
イ
・「機械にはまねできない」⇒×
ウ
・「解析する機械が必要」⇒×
エ
・「まだ課題が多い」⇒〇
問4
記述ですが、「傍線部4以降の語句を用いて」という指定があるので書くべき内容を本文中から探しやすいです。
ここでは、「なぜ信頼には共感が必要なのか」についての答えを指定された箇所から探します。
第6段落に「極めて重要」という表現があり、そこには「共感することにより~な行動を引き出しうることは、信頼関係を築く上で極めて重要」とあります。
ここをまとめればOKですね。
例:信頼関係構築に必要な相手を気に掛け、どう思っているか考えるという行動を引き出しうるから。(44字)
問5
経験に裏打ちされた共感が必要(文章2)=「Aを理解してBすることが重要」(文章1)
文章1において、「○○を理解すべきだ」という主張がされている箇所を探します。
すると、第17段落(最終段落)に「真の弱さを理解しない限り…」とありますのでAは「理解」です。
また、Bにはいるものは例えば「人間の求めるものを提供する」ですが、これは文字数が合いません。この前後から、これと同じ内容を17文字で述べている箇所を探します。
すると、「人間のことや人間社会のことを考える」が見つかります。これがBです。
問6
都立高校入試国語におなじみの200字作文です。
今回は、
・文章1の主張:人間は感情に基づいた思考ができる。それがAIにはない強みだ
・文章2の主張:会話では共感が重要だが、今のAIには真の共感はできていない
・生徒たちの会話
A:AIの能力は優れている
B:感情を理解することはAIにはできない(文章1・2の主旨を踏襲)
C:AIはデータを蓄積すれば感情を理解できそう
D:感情を理解するAIは実現しそう
E:AIには感情理解は難しそう
これらを基に「AIが発達した社会における人間の役割」について考えます。
文章1・文章2・B・E(AIには感情・共感は難しい)⇔A・C・D(AIは優れているから今後なんとかなりそう)
このどちらかの立場に立って書きましょう。
制限時間の中で迅速に書くには、本文の筆者の主張に賛成しつつ書くのが良いです。
したがって、今回は例えば
・文章1・2によるとAIには感情を理解したり共感しながら会話することが難しい
・私もそれに賛成
・ということは、AIが発達した社会における人間の役割は相手に共感するコミュニケーションによって相手の心を動かし、成長を促すことである
といった内容を書くと良いでしょう。
もちろん、他にもいろいろなパターンが考えられます。
あなたなりに考えて、書いてみましょう。
大問5本文
鑑賞文では、
・筆者の主張
・論理構造を示す語句
に注意します。
ちょっと違う
ぼくのは先生のとちょっと違う
「ぼくの」⇔「先生の」
この対比構造が示されています。
嬉しい
筆者の主観=主張を示しています。
ここでは、S口くんによる反論が嬉しいとのことです。
他に「場が盛り上がる」「興味をもってくれる」「ファイトが湧く」といった表現で何度となくS口くんによる反論に対するプラスの評価を下しています。
このことから、S口くんによる反論がこの文章のメインテーマと考えてよさそうです。
反対側
対比構造を示す表現です。
ここまでの流れから、「自分(筆者)の考え」⇔「S口くんの考え」と考えます。
「絶好の機会」というのもS口くんの反論に対するプラスの評価であり、ここからもS口くんの反論がこの文章のメインテーマであるとわかります。
結論
文章における「結論」は筆者のメインの主張です。当然、重要です。
ここでは、
・若葉の旺盛さがメイン
・富士山のすばらしさも詠まれている
というのがレポーターのK川さんおよびそれに賛成する筆者の結論とのことです。
副次的な存在
「副」というのは「主」と対比されます。
「主」がメインであり「副」がサブです。
メインが若葉、富士山はサブというK川さんや筆者の結論が傍線部1でも繰り返されています。
S口くんの主張
筆者の結論に対するS口くんの反論の内容が示されます。
・まず富士山(富士山がメイン)
・日本一立派な富士山を讃えている
K川さんや筆者は富士山は「サブ」と考えていますが、S口くんは富士山が「メイン」だと考えているようです。
べきであろう/すべきだろう
筆者の主張があることを示す文末です。
・富士山は重視されるべき
・始まりに着目すべき
といったかたちでS口くんの「富士山がメインだ」という観点からの考えを述べています。
窺われる
筆者の考え=主張があることを示す文末です。
ここでは、「この句は蕪村の自信作である」という主張です。
むしろ
対比構造を示します。
「富士を重視している」と「若葉を重視している」
の対比です。
そして、
「どちらの見方もありうるが、水掛け論になる」と述べています。
決着のつかない議論が続くことになる、ということですね。
すべき/べきだろう
筆者の主張があることを示す文末です。
ここでは、若葉を重視すべきでありその根拠は季語であるからという筆者の主張です。
重要
文字通り重要です。
ここでは、「切字によって修飾されている」から重要だという主張がなされています。
といわねばなるまい/~なのだ
筆者の主張があることを示す文末です。
こちらは筆者本人の主張ではなく筆者が引用した清水氏の主張です。
しかしながら、筆者がこのタイミングでわざわざ引用しているわけですから、筆者も同じ主張であると考えるのが自然です。
ということで、筆者は
「極めて斬新な手法なのだ」「大景観の形象化だ」という主張をしています。
大観の作である
直前の主張が繰り返されています。
こうした反復はとても重要です。
ここでは、
「日本を上空から見下したような大観」というフレーズが重要である(=設問に使う可能性が高い)と判断できます。
私も同感/べきではないか/かもしれない/言わざるをえない
すべて、筆者の主張があることを示す文末です。
ここでは、
・引用部分に対する賛成の意
・若葉がメインだ
・富士山がメインという考え方もあるかもしれない
・個人の感じ方の問題だ=人それぞれの感性の問題である
という主張がなされています。
どちらの考え方が正しいのかという議論に関して、「自分は若葉がメインだ」としつつも富士山がメインという考え方も否定せずに文章が終わりそうですね。
二項対立
文字通り、対比構造を示します。
「富士」⇔「若葉」です。
この文章のここまでの対比構造が改めて示されています。
~ではないか
筆者の主張があることを示す文末です。
ここでは、「うづみ残して」という表現の重要性が主張されています。
辛口の批評
マイナスの評価を示しています。
ここでは、直後に「しかし」があるのでマイナス評価がメインではないことがわかります。
そうではなく/後者
対比構造があることを示します。
「理屈くさい」「厭味がある」⇔「気のきいた理知的な捉え方」という対比です。
そして、筆者は後者の意見です。
~ではないか
筆者の主張があることを示す文末です。
重要
文字通り重要な箇所であることを示します。
ここでは、「うづみ残して」は注目すべき表現⇒その主語である若葉はやはり重要である
という主張になっています。
個人的なイメージ
こちらも筆者の主張を示します。
「緑の絨毯」とあり、やはり若葉に注目しているようです。
大問5設問
問1
「副次的な存在」という表現から、メインが若葉、富士山はサブという主張が読み取れます。
また、これと対比されている主張として富士山がメインで若葉がサブという主張もあります。
ア:「単独で」⇒単独だとメイン・サブの区分がありません⇒×
イ:「一般的に(中略)中心的な素材となる」⇒一般論への言及はありません⇒×
ウ:「富士山の大きさや力強さ」⇒メイン・サブの議論とは別物になっています⇒×
エ:「この句においては」⇒イと違って一般論ではないことがわかる
「~にはかなわない」⇒メイン・サブという序列の存在を示します⇒〇
問2
設問中の「気持ち」に注目し、本文中から
・気持ちが表現されている箇所
・こうした気持ち⇒富士山がメインであるとしている箇所
この2つのヒントから該当箇所を探すことになります。
すると、
「心地よい」の箇所に行き当たります。このフレーズが含まれている1文が今回探すべき1文です。
問3
「富士を重視している」⇔「若葉を重視している」の2つの対立する意見のどちらが正しいのかという議論が「水掛け論になる」と述べられています。
決着のつかない議論が続くことになるということです。
ア:「描写にこだわっていては」⇒×
イ:「ともに本質をついており」⇒どちらも「ありうる」という評価⇒本質とまでは言われていない⇒×
ウ:「むしろ」⇒対比構造に注目できている
「いつまでも決着のつかない議論」⇒水掛け論ということばの意味が正しく書かれている
⇒〇
エ:「表面的なこと」「中身のない議論」⇒×
問4
「大景観の形象化だ」「大観の作である」という反復フレーズに注目できているかどうかを問う設問です。「日本を上空から見下したような大観」というフレーズがカギになりそうです。
ア:「力強い」⇒×
イ:「架空の視点」⇒×
ウ:「無数に集まっている」⇒×
エ:「上から全体を眺めた」⇒〇
問5
「若葉若葉」
⇒若葉というフレーズを反復している
⇒若葉が重要
⇒若葉がメインであることを表している
⇒若葉がメインであること、若葉の良さを示す6文字のフレーズを探す
⇒若葉がメインであることは筆者の主張である
⇒つまりこの文章の結論である
⇒この文章の序盤に「結論」という語があった
⇒そこに「若葉の旺盛さ」という6字のフレーズがある
⇒これが答え
今回の解説は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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