都立立川高校普通科推薦入試小論文解説・令和5年度(2023年度)

2023年度(令和5年度)都立立川高校推薦入試小論文解説

都立立川高校普通科の推薦入試では、小論文を通じて論理的思考力や資料の分析力、表現力が問われます。
特に、与えられた資料を的確に読み取り、論理的に考えを展開する力が求められます。

この記事では、2023年度の都立立川高校普通科推薦入試で出題された小論文問題について詳しく解説します。
問題を解いた後に解説を読むことで、より深い理解が得られるので、まずは実際に問題に取り組んでみましょう。

小論文の問題はこちらからご覧ください。

では解説を始めていきます。

第1問

概要

この問題では、異なる立場や専門分野の視点を踏まえ、多様な意見を考慮しながら適切な解決策を提案する力が求められます。
現代社会では、職業が専門化しているため、自分の専門分野には詳しくても、他分野に関する理解が不足しがちです。
そのため、一部の視点に偏った意思決定がなされると、異なる立場の意見が考慮されず、社会に問題が生じることがあります。

出題のポイント

①現代社会における専門分化の影響

  • 各分野の知識が高度化し、専門家同士の協力が不可欠となっている。
  • しかし、異なる分野間での連携が不十分な場合、視野が狭くなり問題解決が困難になる。

②対立する意見の調整の重要性

  • 例えば、経済と環境保護、都市開発と文化財保護など、異なる立場が対立する事例が挙げられる。
  • こうした対立を解決するには、多様な意見を取り入れ、双方が納得できる方法を模索する必要がある。

③解決策の提案

  • 具体的な事例を挙げ、それぞれの立場を尊重しながら折衷案を提示することが求められる。
  • 一方の立場に偏りすぎないよう、バランスの取れた論理的な主張を構築する。

このように、対立する意見をどのように調整し、社会全体にとって最適な解決策を見出すかを論じることが、この問題の鍵となります。

文章のポイント

①現代社会における専門化の進展

  • 各分野の知識が高度化し、専門家同士の連携が重要になっている。
  • しかし、専門外の分野については理解が不足しやすく、視野が狭くなりがちである。

②個人や組織の視点の偏り

  • 自分の所属する分野や組織の利益を優先しがちであり、他者の意見を十分に考慮しないことがある。
  • その結果、異なる立場の意見や社会全体の利益を無視した意思決定がなされることがある。

③多様な利害関係者への配慮の必要性

  • 例えば、経済発展と環境保護、都市開発と文化財保護など、対立する立場の調整が求められる場面が多い。
  • 多くの人々の関心や不安に配慮し、公平で持続可能な解決策を見出すことが重要である。

このように、自分の視点に偏らず、多様な立場を尊重しながら意思決定を行うことの重要性が本問のテーマとなっています。

解説

この問題の最大のポイントは、適切な事例を思いつくことです。
現代社会において意見の違いが生じている問題を考え、その対立をどのように調整し、解決へ導くかを論じる必要があります。

✅ 事例の選び方のポイント
①身近な話題やニュースを活用する

  • 社会で実際に議論されているテーマを選ぶと、説得力のある主張がしやすい。
  • 例:環境問題、エネルギー政策、都市開発、AI技術の導入など。

②多様な利害関係者が関わる問題を選ぶ

  • 企業、政府、市民、専門家など、複数の立場の人々が関わる話題が望ましい。
  • 例:再生可能エネルギーの推進と電力供給の安定性、森林保護と都市開発のバランスなど。

③賛否が明確に分かれるテーマを選ぶ

  • 「どちらが正しいのかが自明でない問題」を選ぶことで、論理的な議論を展開しやすい。
  • 例:自動運転技術の導入(安全性 vs 雇用問題)、オンライン教育の拡充(学習の自由度 vs 対面授業の重要性)。

④解決策を考えられるテーマを選ぶ

  • 「この対立を解決するにはどうすればよいか」を提案する必要があるため、現実的な解決策を考えやすい問題が適している。
  • 例:プラスチックごみ削減と企業のコスト負担、働き方改革と企業の生産性向上。

このように、単なる意見の対立を述べるのではなく、「多様な視点を踏まえたうえで、どのような解決策があるか」を考えることがポイントとなります。

解答例

 気候変動対策をめぐって、積極派と慎重派の間で意見が分かれている。積極派は、地球温暖化が深刻化しており、温室効果ガスの排出削減を急ぐべきだと主張する。異常気象や海面上昇による被害を抑えるためには、再生可能エネルギーの推進や化石燃料の使用規制が不可欠だと考えている。
 一方、慎重派は、過度な規制が経済に悪影響を及ぼすことを懸念する。急激な脱炭素化は企業の負担を増やし、雇用や産業競争力を損なう可能性がある。また、再生可能エネルギーの安定供給には技術的な課題が残るため、現実的な対策が必要だと主張する。
 この対立を解決するには、両者の立場を考慮し、持続可能かつ経済的な対策を進めることが重要だ。例えば、技術革新によりクリーンエネルギーのコスト削減を促進し、脱炭素化が可能な環境を整える。また、段階的な規制強化や国際協力を進めることで、環境と経済のバランスを取りながら、持続可能な社会を実現できる。(398文字)

第2問

概要

この問題は、伊勢参宮の旅の歩行距離に関するものであり、与えられた文章や表を正確に読み取り、計算や考察を行う力が求められます。

出題のポイント

  • 資料の正確な読み取りが最優先となるため、問題文の指示を慎重に確認することが重要。
  • 歩行距離の単位変換や計算ミスに注意する。
  • 歩行距離の傾向や特徴を考察し、記述する問題も含まれる。
  • 表に記載されたデータを活用し、適切なグラフを作成する能力も問われる可能性がある。

解答のポイント

  • 歩行距離の計算や比較を正確に行い、適切な単位で表現する。
  • 歩行距離の傾向を分析し、資料の内容と結びつけて論理的に考察する。
  • 資料に基づいた具体的なデータを示しながら、歩行距離の意味や制限について説明する。

この問題では、資料の読み取りを誤ると大きく減点される可能性があるため、慎重に数値を確認しながら解答を作成することがカギとなります。

問1

この問題では、伊勢参宮の旅の歩行距離に関するデータを正確に読み取り、計算や比較を行う力が求められます。
以下、それぞれの小問について詳しく解説します。

(1)

平均歩行距離 32.5km を里と町に換算する。
1里 = 3.9km であるため、以下の計算を行う。

32.5 ÷ 3.9 ≈ 8.3333… 里
端数 0.3333… を町に換算すると、1里=36町なので、
0.3333… × 36 = 12町

8里12町

(2)

1日の平均歩行距離が 39km を超えている史料を探す。
表を確認すると、該当するのは 43.2km であり、その史料番号は 16 である。

(3)

総歩行距離が最も長い史料を探す。
表を確認すると、最も長い総歩行距離は 3174.8km であり、その史料番号は 35 である。

(4)

1日に歩いた距離の最大値を探す。
表を確認すると、最も長い1日あたりの歩行距離は 75.0km であり、その史料番号は 28 である。

(5)

歩行距離別の日数に注目し、70km台 が 1日 になっている史料を数える。
表を確認すると、そのような史料は 5つ ある。

問2

この問題では、指定された史料(32、34、35、36、39)のデータを集計し、歩行距離別の度数を求める ことが求められます。
以下、それぞれの距離帯ごとに度数を計算し、グラフ作成の基礎データを整理します。

解説

各距離帯の合計を求める際、史料番号32、34、35、36、39のデータを足し合わせる 必要があります。
各史料のデータを確認し、適切に集計しましょう。

距離帯(km)史料32史料34史料35史料36史料39合計
~10km031138
10km台5686934
20km台12720211676
30km台1615303333127
40km台2413251329104
50km台7536223
60km台002103
70km台001102

求めた度数をもとに、適切な棒グラフを作成しましょう。
各距離帯の合計値を 縦軸に度数、横軸に距離帯(~10km、10km台、20km台…) の形で整理すればOKです。

問3

解説

A:日々の道中の歩行距離の目安

本文には、「男性の平均的な1日の歩行距離は 20~40km、女性は10~30km」と記載されている。
また、史料では「歩行距離の多くは20~30km台に集中」 していることから、体力のない人が同行者にいることを考慮して一般的な徒歩移動の目安として20kmが適切であると考えられる。
20kmを「里」に換算すると、20 ÷ 3.9 ≈ 5.13 里 となり、およそ5里 となる。

B:同行者間で相談が必須となる歩行距離

本文には、「女性の歩行距離の限界は1日に50km台だった」と記述されている。
よって、50kmを超えた場合が相談が必要な基準 と考えられる。
50kmを「里」に換算すると、50 ÷ 3.9 ≈ 12.8 里 となり、およそ13里 となる。

解答例

A:5

日々の道中の歩行距離の目安(A)は、本文に「男性の平均歩行距離は20~40km、女性は10~30km」とあり、史料でも「多くの歩行距離が20~30km台に集中している」ことから、体力のない人にも配慮した移動距離として20kmが適切であると判断した。
20kmを「里」に換算すると 約5.13里 となるため、5里 とした。

B:13

同行者間で相談が必須となる歩行距離(B)は、本文の「女性の歩行距離の限界は1日に50km台だった」という記述を根拠とする。50kmを「里」に換算すると 約12.8里 となるため、13里 とした。

まとめ

都立立川高校普通科の推薦入試小論文では、資料の正確な読み取りや論理的な考察力、そして自身の意見を根拠を示しながら適切に表現する力 が求められます。

第1問では、多様な意見を考慮しながら問題を整理し、適切な解決策を提案する力 が問われました。異なる立場や利害関係を理解し、公平な視点で議論を進めることが重要です。

第2問では、資料を正確に分析し、数値データをもとに論理的な判断を行う力 が求められました。計算ミスを防ぎながら、文章や史料の記述を根拠として適切な答えを導き出すことがポイントでした。

推薦入試では、単なる知識だけでなく、資料をもとに自ら考え、論理的に表現する力が試されます。日頃から新聞やニュースに目を通し、社会問題やデータの分析に慣れておくことが重要です。

都立立川高校の推薦入試合格を目指す方は、今回の問題の解き方を参考にしながら、論理的思考力と表現力を磨いていきましょう!

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