都立青山高校推薦入試小論文解説・令和6年度(2024年度)

2024年度の青山高校の推薦入試小論文第1問では、社会や政治などの時事的テーマを題材に、受験生が自らの考えを論理的に述べる能力を問われます。
この問題では、知識や理解を確認する「知識問題(問1)」と、それを基にした意見や考察を求める「考察問題(問2)」という2つの構成が特徴です。

問1では、具体的なデータや事実を正確に扱う力が、問2ではテーマに対する自分の意見を論理的かつ説得力を持って記述する力が求められます。本記事では、令和6年度の小論文テーマである「小選挙区比例代表並立制」を例に、問1と問2それぞれの解説を行い、考え方や解答例を示します。これを通じて、論理的な文章を書く練習を進める参考にしてください。

問2では浮力に関する実験と考察問題が出ました。他校の小論文試験と違い、自分の意見ではなく、しっかり解答がある問題です。

小論文の問題はこちらからご覧ください。

問題1の概要

テーマ:「小選挙区比例代表並立制」

この制度は、日本の衆議院議員選挙で採用されており、2つの異なる選挙制度である小選挙区制と比例代表制を併せ持つ特徴があります。
これにより、各制度のメリットを活かし、短所を補完する仕組みが形成されています。

小選挙区制

  • 一つの選挙区から1名の代表を選ぶ方式。
  • メリット:政権が安定しやすい。
  • デメリット:死票が多く、少数意見が反映されにくくなる。

比例代表制

  • 政党の得票率に応じて議席を配分する方式。
  • メリット:少数意見も反映されやすい。
  • デメリット:多くの政党が議席を持つため、政権が不安定になる可能性がある。

問1の解説と解答

問題

「小選挙区比例代表並立制」のもとで、あるブロックの小選挙区制と比例代表制による当選者を特定する問題。

解説

①小選挙区制での当選者を決定

各選挙区で最も票を集めた候補者が当選します。

  • 第1選挙区ではA氏が当選。
  • 第2選挙区ではE氏が当選。
  • 第3選挙区ではI氏が当選。
  • 第4選挙区ではM氏が当選。

②比例代表制での議席配分

比例代表制では、以下の手順で当選者を決定します。

1:ドント方式で議席配分

政党の得票数を1、2、3と割り続け、商の大きい順に議席を決定します。
各政党の割り算結果に基づき、議席数を決めます。
この問題の場合、

はる党なつ党あき党ふゆ党
④21000②30000①42000③27000
10500⑥15000⑤2100013500
700010000140009000

となりますので、比例代表では
・はる党が1議席
・なつ党が2議席
・あき党が2議席
・ふゆ党が1議席
を獲得します。

2:政党名簿順位や惜敗率を考慮

当選者は各政党が作成した名簿の上位から選ばれます。
同順位の場合、惜敗率(落選者の得票数÷当選者の得票数×100)が高い候補が優先されます。

解答

はる党:F

なつ党:B、E、I、W

あき党:A、G、M、Q

ふゆ党:O

問2の解説と解答例

問題

現在の衆議院議員選挙が「小選挙区制」と「比例代表制」を並立させている理由を、両者の短所に触れながら300字以内で説明すること。

解説

この設問では、以下の3つのポイントを押さえる必要があります。

  • 小選挙区制の特徴と短所(少数意見の軽視)
  • 比例代表制の特徴と短所(政権の不安定性)
  • 並立制がそれぞれの短所を補う仕組みであること            

また、「青山さんのノート」の「政党とは」の記述には以下のポイントがあります。

  • 政党は同じような政治的考えを持つ人々の集まりで、政権獲得を目指して活動する団体。
  • 現代の政治は政党中心であり、複数政党制による民主政治が実現している。
  • 二大政党制や多党制の特徴が示され、選挙制度がこれに深く関わっている。

これらを踏まえ、「並立制」が政党政治や民主政治の実現を支える仕組みであることを解答に盛り込む必要があります。

文章全体を簡潔にまとめつつ、両制度の短所を具体的に挙げることが重要です。

解答例

現在の衆議院議員選挙は、小選挙区制と比例代表制を併用している。小選挙区制は一つの選挙区から1名を選ぶため、二大政党制を形成しやすく、地域の意思が強く反映されるが、少数意見が軽視される問題がある。一方、比例代表制は多党制を促進し、政党の得票率に応じて議席を配分するため、多様な意見を反映しやすいが、政権が不安定になる可能性がある。「並立制」はこの両者を組み合わせ、地域住民の意思を尊重しつつ、多党制を通じて少数意見も反映する仕組みとなり、二大政党制と多党制の長所を活かして、安定性と多様性を両立させた民主政治を支えている。この制度により選挙結果が民意を幅広く反映する仕組みが実現されている。
(294文字)

まとめ

青山高校の推薦入試小論文では、時事的なテーマに基づく深い理解と論理的な考察力が求められます。
「小選挙区比例代表並立制」という制度は一見複雑ですが、その特徴を整理し、短所と長所を的確に捉えることで説得力のある答案を作成できます。
本解説を参考に、論理の一貫性や具体性を意識した練習を積み重ね、高得点を目指してください。
また、自分の意見を述べる際には、提示された資料や事例を活用し、根拠を明確にすることを心がけましょう。

問題2の概要

テーマ:浮力に関する実験

この問題は、水中で物体が受ける浮力の性質を実験データから分析し、その結果を基に考察する内容です。
物体が水に沈められた際に働く力や、浮力がどのように影響を及ぼすかを理解することが求められます。問題は以下の三つに分かれています。

問1
実験1のデータを用いて、試料の体積と電子てんびんの値(浮力の一部が影響する値)の関係をグラフで表します。
与えられた密度の公式を用いて体積を計算し、正確にプロットすることが必要です。

問2
問1で作成したグラフが原点を通る直線にならなかった理由を説明します。
浮力や実験条件に影響を与える要因を論理的に挙げることがポイントです。

問3
実験2の条件A~Cについて、電子てんびんの値の大小関係を考察し、その理由を述べます。
試験管の内容物や角度の違いが浮力にどう影響するかを分析します。

問1の解説

与えられた公式を用いて、試料の体積を計算します。

公式:体積(cm³) = 質量(g) ÷ 密度(g/cm³)

試料の質量と密度のデータを以下のように計算します(例として一部を示します)

・銅(質量109.8g、密度9.0g/cm³):体積 = 109.8 ÷ 9.0 = 12.2cm³
・木(質量11.2g、密度0.80g/cm³):体積 = 11.2 ÷ 0.80 = 14.0cm³
・ガラス(質量15.0g、密度2.5g/cm³):体積 = 15.0 ÷ 2.5 = 6.0cm³

グラフの作成

計算した体積を横軸(x軸)、電子てんびんの値を縦軸(y軸)に取ります。
それぞれの試料(銅、木、ガラス)を異なる記号でプロットし、線で結びます。

問2の解説と解答例

グラフが原点を通る直線にならなかった理由

実験の結果、グラフが原点を通る完全な直線にならないのは以下の理由によると考えられます。

①試料の形状や材質の影響
浮力は物体が排除する水の体積に比例しますが、試料の形状や材質の違いが水中での挙動に影響を与えます。
同じ体積でも形状が異なれば、浮力の受け方が異なる場合があります。

②水の物理的特性
実験中に水の表面張力や粘性が影響し、電子てんびんが測定する値に微細な誤差が生じる可能性があります。

③実験装置の限界
電子てんびんの感度や精度の問題、また試料を水中に沈める際の手動操作によるばらつきなど、実験装置自体の特性が影響している場合も考えられます。

一番想起しやすいのは③であるため、③を書けば良いと思われる。(もちろん①②を答えてもOKであろう。)

解答例

試料を水中に沈める際の手動操作でばらつきが生じたから。

問3の解説と解答例

浮力は、物体が水中で排除する液体の体積に比例して発生します。
この浮力の大きさは、物体が押しのけた液体の重さに等しくなります。
したがって、物体が水中に沈んでいる体積が大きいほど、浮力も大きくなります。

・状態A
水で満たした試験管を垂直に沈めた場合、一定の浮力が働きます。

・状態B
条件Aの試験管を60°傾けた場合、試験管のより多くの部分が水面下に入るため、水中に沈んでいる体積が状態Aより増加し、浮力も状態Aより増加します。

・状態C
砂で満たした試験管を垂直に沈めた場合でも、試験管の体積は条件Aと同じです。
よって、浮力も状態Aと同じです。

解答例

・A=C<B

・状態Aと状態Cは体積が同じであるため、浮力も等しいです。状態Bは、試験管を60度傾けることでより多くの部分が水面下に入るため状態Aや状態Cよりも浮力が大きくなります。

まとめ

青山高校の推薦入試小論文では、テーマの理解と論理的な考察が求められます。
「浮力に関する実験」では、実験データの解析やその結果を論理的に説明する力が問われます。
今回の解説を参考に、実験の背景知識を整理し、答案を構成する練習を重ねることで、より高得点を目指しましょう。

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